全長 20cm(写真は1cmほどの幼魚)
カエルアンコウの仲間たちは、同じ種類内の色の変異が多すぎるせいで、色柄による種類の判別が難しい……
…という説明は、もちろんのことイロカエルアンコウにもあてはまる。
図鑑しか頼るすべがなかったその昔は、どれほど多数の魚種を網羅している図鑑でも、カエルアンコウたちの種ごとのカラーバリエーションをすべて網羅することなどあり得なかった。
ところがネット上に情報が溢れる世界で猫も杓子もデジカメダイバーになってくれたおかげで、いろんなバリエーションのカエルアンコウたちの姿をネット上で観ることができるようになっている。
なかには当サイト当コーナーのように種の同定がかぎりなく怪しい場合もあるにせよ、昔に比べれば便利なことこのうえない。
冒頭の写真のイロカエルアンコウは、一望白い砂底にポツンとたたずんでいた10mmほどのスーパーチビターレだ。
昔ならこのチビチビがいったい何カエルアンコウなのか、手も足も出なかったかもしれない。
しかし今の世の中なら、このオレンジ色とまったく同じカラーリングのカエルアンコウが、「イロカエルアンコウ」として多数ネット上で確認することができてしまう。
便利便利。
ところで、カエルアンコウ類の体色のバリエーションはオトナになってからの話ではなく、このようなチビチビの時点ですでに様々な色合いを見せる。
オレンジ・チビターレにくらべるとやや成長してはいる個体たちながら、以下にそのバリエーションをざっと並べてみよう。
これも…(サイズは2cm弱)
これも…(15mmほど)
これも…(2cm弱)
これも…(2cmほど)
…み〜んなイロカエルアンコウ。
と、ここでワタシがもっともらしく断言している情報が一人歩きしてしまい、これを参考にしてしまう方が出てこないともかぎらないから念のために言っておくと、あくまでも「多分…」なので、鵜呑みにしてご自身の種の同定の根拠にしないようご注意ください。
とりあえずここで挙げたものがすべてイロカエルアンコウだとして、我々が水納島で出会うことができたものたちだけでもこんなに多種多様なのだから、世の中全体のバリエーションとなると、もはや手が付けられないほどだろう。
ちなみにここで紹介しているのはあくまでもチビチビだけで、20cmにもなるイロカエルアンコウがこの先成長すると、その体色はいったいぜんたいどれくらいの多様さをみせるのだろう……。
これなどもそのバリエーションのひとつ(のはず)。
たしか撮影当時参考にしたヤマケイの図鑑に、もう少し地色が淡い系ながらほぼ同じ模様が入っている個体が載っていたおかげで、イロカエルアンコウ認定したはず。
背後のカワテブクロに比してそのサイズがデカいことがわかる。
このイロ・アダルトの場合、エスカをピコピコさせてくれたから、そのエスカを観るかぎり、少なくともオオモンカエルアンコウではなさそうなことはわかる。
これくらい大きくなっていて、なおかつこのような色合いで、エスカがこんな感じなら、イロカエルアンコウと思って差し支えないんだろうか?
しかしいつもいつもエスカをピコピコさせてくれるわけではない。
この子は??
そしてこの子は?
いずれも10cm弱ほどのサイズで、色味はまったく違うけれど、なんとなく両者は似ている感じ。
どっちもイロカエルアンコウってことでOKだろうか?
…と、疑念は尽きない。
でも写真だけを手掛かりに正確に判別するのはどだい無理なのだから、ここはもう開き直ってイロカエルアンコウということにしておこう。
オトナのイロカエルアンコウはつれないヤツが多く、再訪すると跡形もなく消え去っているということが多い。
それに対し2cm前後のチビターレなら、拠り所がしっかりしてさえいれば、わりと同じ場所に居続けてくれる。
先に紹介したチビたちのうち、黄色いチビはひところ新一本サンゴの土台の岩にいたもの。
小さいながらもエスカを使って、健気になにやらをおびき寄せていることもあった。
死サンゴの枝間で踏ん張っていることもあれば…
ときおり波動砲もぶっ放してくれた。
一方、冒頭のオレンジ色のチビターレは、何の変哲もない砂底にポツンといるだけだというのに、しばらくの間ほぼ同じ場所に居続けてくれていた。
砂底のちょっとした凸凹に身を寄せてただジッとしているだけの時があるかと思えば、エスカをピコピコと上下に動かしているときもある。
こうしてエスカをピコピコさせながら、ジワリジワリと這い進むオレンジ・チビターレ。
エスカは本来ならエサとなる小魚などをおびき寄せるために使用するツールのはずなんだけど、この一望砂だけの海底でどういう効き目が?
…と思いつつファインダー越しに観ていると、画面の左側からなにやら小さなものがチョロチョロチョロロと這ってくるのが見えた。
するとこのオレンジ・チビターレも……
凝視。
え?
もしかして??
と思ったら、一瞬の早ワザで「ボイッ!」と飲み込んでしまった。
なにしろ砂粒3つ分くらいの小さなクリーチャーだったからいったいそれがなんだったのか不明ながら、オトナになれば見向きもしなくなるだろうことは間違いない小動物だ。
我々の目にはなかなか見えないだけで、海底にはこのようなクリーチャーがそこらじゅうで蠢いている。
なるほど、チビターレの頃はこういうものを食べているのか…。
でも獲物が小さいだけに1度じゃまったく足りないらしく、このあと2度ほど見せてくれた。
残念ながら、捕食の瞬間は撮れず。
それくらい活発だから、撮っている間このチビターレはずっと歩いていた。
その様子がまたカワイイ(アンヨの動きにご注目)。
こうして歩いている時に、頭の上のツノのような1番目の背ビレを、クネクネさせつつ前に倒したり元に戻したりしながら歩いていた。
立ち止まっていても、このツノのクネクネは止めない。
このツノの感じといい、歩く時の角の動かし方といい、ワタシが知っているクマドリカエルアンコウにそっくりだったので、このオレンジ・チビターレはクマドリか?と思い込もうとした。
ところが拙日記にてこのオレンジ・チビターレを紹介したところ、ゲストのブラック佐藤さんからネット上に同じ色味のものがイロカエルアンコウとしてけっこう載っていることをご教示いただいた次第。
もっとも、そのネット上に載っている情報自体がはたしてどこまで正確か、というギモンもなくはない。
「〇〇のサイトでイロカエルアンコウとされたいたから」
という根拠が、グルグルと巡り巡るエンドレスサークルになっているかもしれないのだから。
そういうことを考えだすとキリがないので、我々シロウトとしては、とにかく「イロカエルアンコウ」だと思ってしまえばそれでいいのだ………
…とわりきってしまうことにしよう。