水納島の魚たち

イトベラ

全長 5cm(成長すると12cmほどらしい)

 あっという間に梅雨が明けて晴天続きの6月(2025年)のこと、なにか居はせぬか…と、何もいないこと覚悟で不毛を顧みず砂底を徘徊していたところ、小さな岩に寄り添うようにしてぼっち暮らしをしているベラの若魚の姿があった。

 目についた当初はキスジキュウセンのチビかな…と思い、そのままスルーしかけたのだけど、よく見ると体のラインが破線になっているし、そのラインは中央よりちょい上を通っているからキスジキュウセンとは違うっぽい。

 中央より上に破線状のラインがあるベラといえば、テンスモドキもいるけれど…

 …フォルムもたたずまいも全然違う。

 かといって、その特徴が該当する他のベラを知らない。

 誰だこのベラ?

 後刻調べてみたところ、どうやらこのベラはイトベラの若魚らしい。

 白い砂底に住まう魚たちは、目立たないようにするために体色を白く淡くしているから、異なる環境で撮影された図鑑の写真やネット上の画像の色模様とは、おうおうにして全然違って見える。

 そのためそれらの写真と見比べる際には脳内で「白い砂底フィルター」に通す必要があって、白砂フィルターを通して見てみれば、全然違って見えていたものがだんだんビンゴ!になってくることもある。

 図鑑的記載によれば、イトベラの分布域には「沖縄島(本島のこと)」とわざわざ個別の島名で記されているくらいだから、県内ではけっこうレアな存在なのだろう。

 これまでその存在に気づいていなかったワタシにとっては、もちろんのこと人生初遭遇!

 さすがオレ、5cmほどのこんな目の端系ベラにピン!と来るあたり、ひところの憑りつかれたようなベラベラブダイバーぶりも伊達ではなかった。

 と、地味地味ジミーにも目ざとく気づくシャープな目を自画自賛していたところ、まさかのジジツが。

 さきほどのキスジキュウセン・チビターレの写真を探すため、キスジキュウセンカテゴリーのフォルダの中の写真を見ていたら、そこになんと…

 …イトベラの姿が!

 これは2021年の6月に撮ったもので、今回出会ったものよりやや大きい感じ。

 さらに驚いたことに、昨年4月には、今年で会ったものよりももう少し小さめなイトベラの写真まであった。

 キスジキュウセンのチビターレはたくさんいるなか、あえて彼らを撮っているってことは、撮っている時はきっと他と比べて何かが違って見えたのだろう。

 でも年の終わりにフォルダにまとめる頃には、そんなことなどすっかり忘れ、「はい、キスジキュウセンね…」でスルーしていたらしい。

 全然スルドクないじゃん、オレ…。

 過去にも遭遇していたことがわかったイトベラ、実は今年(2025年)はその後も遭遇機会があった。

 恥ずかしながら、↑これが「イトベラ」と認識しつつ撮った初めての写真。

 沖縄ではレアとかいいつつもここ5シーズンでこんだけ出会っているってことは、どちらかというといないのではなく、単に気づかれていないだけなんじゃ…。

 ともかくそういうわけで、今年は記念すべき(個人的)イトベラ元年となったのだった。