全長 4cm
他の稿でもときどき触れているように、普段リーフ外でのボートダイビングばかりしている関係で、潮が引いている時なら膝下を濡らすくらいで歩けるほど浅いリーフ上を探訪する機会はなかなかなく、せいぜいターボスネイル生息密度調査のときくらいのもの。
なので、ヒトにとって最も身近であるはずの浅い海が、水深30m超の深いところよりも遥かに縁遠かったりする。
それでもごくたまに、そういうところをカメラを携えてウロウロすることがある。
すると、何もかもが目新しいリーフ上の水深1mほどのところで、やけに白い体の小さなスズメダイが目についた。
3〜4cmほどだから、種類によってはオトナサイズになるものの、もっと大きくなる種類の幼魚っぽい雰囲気も漂わせていた。
でもスズメダイ類の幼魚にお馴染みの眼状斑がどこにもないところをみると、これでオトナなのかもしれない。
前述のように普段なかなか訪れないとはいえ、これくらいの大きさで表に出ている魚なら、ターボスネイル生息密度調査時に目にしていても良さそうなものなのに、こんなに白く見えるスズメダイ類の幼魚もしくはオトナなど観た覚えがない。
ただ、ナゾのスズメダイが体の向きを変えると、白く見えていた体の背中あたりの色味が、若干緑がかって見えた(冒頭の写真)。
出てきたと思ったらすぐに引っ込むあたりは警戒心が強そうながら、遠くまで逃げ回るわけではなく、隠れ家にしているらしき岩の亀裂から出たり入ったり、ちょっとばかし場所を変えたりする程度なので、その場にいれば姿を拝むことはできる。
この姿、かつて図鑑で観たことがあるようなないような、実際に海中で目にしたことがないようなあるような……。
はてさて、このスズメダイはいったい誰??
…と、後刻図鑑を見ながら途方に暮れかけたとき、ハタと閃いた。
ひょっとして、背中の緑っぽいところは、一般的にはもっと濃いいろなのでは?
そう思って図鑑を見直してみたところ、背中の緑といい、特徴的な猫目といい、そっくりなものがいた。その名も…
イワサキスズメダイ。
リーフ上など浅いところにごくごくフツーにいる種類だそうで、ウニがあけた穴などを隠れ家にしているという。
種類として警戒心が強いようで、なるほど、そのためこちらが察知する前に穴に逃げ込んでしまうから、ターボスネイル生息密度調査時には確認したことがなかったのだろう。
イワサキスズメダイはこれが成魚サイズのようで、もっとチビだと猫目がさらに顕著で、体に比した目のサイズが大きいからカワイイ(眼状斑は無いらしい)。
もちろんワタシが全然知らなかっただけで、本島あたりでビーチエントリーダイビングをしている方々には、成幼いずれも相当お馴染みのスズメダイであろうと思われる。
恥ずかしながらワタクシ、それほどフツーにいるこの魚を、このたびようやく初認識。
誰も訪れない深い深い海の底と同じくらい、リーフ上の浅い浅いところにも、まだまだ数多くの未知との遭遇が待っているに違いない。