6cm
サンカクハゼの仲間のなかでは、かなり「最近」和名がついたカペラサンカクハゼ。
昨年(2021年)刊行された「新版・日本のハゼ」においてその国内における分布域は
奄美大島、伊良部島、西表島
と局所限定で記されているところからして、そうおいそれと遭遇できる種類ではないのだろう。
それはわかっちゃいるけれど、日本にいるとなれば、水納島にいてもおかしくない…という希望的観測が加味されてしまう。
そのため、あれを見ては「カペラサンカクハゼだ!」これを見ては「カペラサンカクハゼだ!」ということになってしまった。
そのいずれも別の魚だったという哀しいオチについては、ゴイシサンカクハゼの稿で紹介しているとおり。
誤解だったことが判明するたびに、やはりそう簡単には出会えないか…とゲンジツを思い知っていたワタシである。
ところが!
2022年も晩秋となり、海中の夏の賑わいもようやく落ち着きを取り戻してきた11月下旬のこと、とある事情で久しぶりとなったボートダイビングで訪れた砂地の根、その片隅にいたハゼは…
カペラサンカクハゼ?
いや待て、これまでさんざん間違えまくってきたのだから、ここでまた同じ愚を繰り返すわけにはいかないぞ。
そう自分を戒めつつ、ソロリソロリと眺めてみれば、やっぱり…
カペラなんじゃね?
これまで何度も何度も裏切られ続けた(誤認識し続けた)こともあり、なお自分を信じ切れないままではあったものの、ともかく1枚撮ってみたところ…
…このあとすぐに陰に去ってしまった。
ま、どうせ今回もまた、懲りずに「なんちゃって」なのだろう…
…と思いきや、撮った画像をカメラのモニターでチェックしてみたところ、ホントにホントに…
カペラかも。
なんてことだ、たった1枚撮っただけで消え去ってしまった。
でもどうやら活動中だったらしく、少し時間をおいて再び戻ってきてみれば、同じような場所にまた姿を現していた。
こ…これは。
背ビレの形といい、青と黒が連星のように重なる模様といい…
尾ビレの付け根付近の黒い線といい…
これってどう見ても…
カペラサンカクハゼじゃんッ!!
ついに出会えた、カペラサンカクハゼ。
というか、これまでもゲストをご案内しているときはホントにカペラサンカクハゼだったものの、後日カメラを携えて再訪したときには違うモノを撮ってしまっていた…ってことなのかな?
ともかくも、やっと記録に残すことができた。
これにて分布域に「水納島」も追加だ
…標本記録はないけど。
そんなわけで、これまで違うモノを撮っては「カペラ」と言い続けて失礼いたしましたが、これがカペラサンカクハゼです。
※追記(2023年11月)
今秋(2023年)、ファーストコンタクトとはまったく異なる場所で、もう少し大きめのカペラに出会えた。
やや大きめだからか周りに近縁のサンカクハゼたちがわりといるからか、カメラを向けても動じることがなく、惜しげもなくその身を晒し続けてくれるおりこうさんで、背ビレのカペラマークは、前年出会った子よりも一段と青味が強い。
共生ハゼ類の並みいる人気者たちとは対照的に、サンカクハゼの仲間たちはなかなかスターダムにのし上がれないのだけれど、レア度といい美しさといい、なかなかに実力を秘めているカペラサンカクハゼ。
ちなみにマツダの往年の名車カペラは、1970年代の「スター」になるようとの願いを込めて、お星様から名をいただいたそうな。
同じ星の名を持つカペラサンカクハゼ、はたしてサンカクハゼ界の明日を輝かす希望の星となるか?