水納島の魚たち

ケショウフグ

全長 60cm

 唐突なでかさ、という意味ではモヨウフグに引けを取らないサイズを誇るケショウフグ。

 でっかいフグはモヨウフグ、と思い込んでいると、なかなか近寄らせてくれない彼らのこと、ケショウフグに出会っていてもモヨウフグだと勘違いしてしまうかもしれない。

 見分け方は簡単。目の周りの模様がまったく違っており、ケショウフグは目を中心に放射状にラインが入っている。

 とはいえ近寄れなきゃ目の周りの模様もへったくれもないんだけど。

 ケショウフグも最近まで「近寄れないフグ」というイメージが強かったのだけど、モヨウフグ同様、近年はけっこう近寄らせてくれるオトナのケショウフグに出会う機会が増えている。

 目の前でカメラを向けているというのに、エサを探す素振りを見せていたくらいだからよほどのんびりしていたのだろう。

 近寄れるということでは、若ければ若いほどお近づきになりやすい。

 これまでに出会ったケショウフグの人生最小級はこちら。

 クリーニングに勤しむホンソメワケベラと比較すればおわかりいただけるとおり、20cmにも満たないサイズだ。

 コクテンフグなら立派なオトナサイズでも、ケショウフグならチビもチビ。

 それにしても、お腹というか胸のあたりというか、とにかくそのあたりの妙なだらしなさはなんなのだろう?

 これはクリーニング要求ポーズなのだろうか?

 同じく砂地のポイントで、もう少し大きい若魚に出会ったこともある。

 オトナのようにつれなく遠くまで逃げたりすることはなく、写真を撮らせてもらいつつしばらく付き従うようにランデブーしていると、やがて彼はホンソメクリーニングスポットに到着した。

 やっぱりそのお腹、だらしない…。

 お腹だけじゃなく……

 顔までだらしなくなっているような気が…。

 「アヘ…」という声が聴こえてきそうなほどだ。

 それほどホンソメワケベラのクリーニングが心地いいのだろう。

 モヨウフグの場合はかわいい顔になるアングルを探しても探しても見つけられなかったけれど、ケショウフグは探すまでもなく進んで見せてくれた。

 アッチョンブリケ! by ピノコ。

 これはホンソメワケベラに対して「お口の中もお願いしまーす!」という時の顔で、ホンソメワケベラはしっかりそのリクエストに応えてくれる。

 こんな至れり尽くせりのケアをしてもらえるとなれば、お腹のあたりのしまりが悪くなるのも無理はない?

 追記(2021年10月)

 昨年(2020年)今年と、相次いでケショウフグの人生最大記録と最小記録を更新した。

 昨夏、リーフ際のオーバーハングの暗がりでふと見上げたら、そこにはこんな巨大クリーチャーが。

 見上げたところにいきなりこんな顔があったからビックらこいた。

 実測は60cmくらいなんだろうけど、海中で観ると優に1m超に見えた巨大ケショウフグ。

 よく見ると、体中に黄色い模様が散らばっている。

 これはケショウフグの老成魚の特徴なのだろうか、それともこの個体固有の特殊な色彩変異なのだろうか。

 巨大だからか年老いているからか疲れているためか、巨大ケショウフグはその後しばらくの間まったくこの場から動かず、その時潜っていた全員がじっくり眺めることができたのだった。

 一方、今年(2021年)出会った人生最小記録はこちら。

 チビと言っても伸ばした尾ビレの先まで入れれば全長10cmちょいと、オトナのハナダイなどと大して変わらぬサイズながら、オトナのケショウフグを見慣れた目には、10cmなんていったら激チビも激チビ。

 しかも正面から観ると…

 テニスボール大。

 思わず両手に包んで持ち帰りたくなるサイズだ。

 けれどケショウフグのチビターレといえばゴルフボール大のものも観られるそうで、ネット上の写真を見るかぎりでは、色柄クッキリで模様は大きめの白い点々だけ。

 ああ観てみたい…。

 そんなチビターレ、いったいどこにいるんだろう……。