水納島の魚たち

クジャクスズメダイ

全長 5cm

 クジャクスズメダイという名前も姿形も知ってはいたものの、長らく国内で目にしたことはなかった。

 魚類の場合、和名がついているということは日本に分布している、という意味になるわけだけど、和名は付けられていてもけっして日本の海が主生息域ではないという魚も多い。

 このクジャクスズメダイもそういった魚だから日本では稀で、水納島でも長らく出会えなかった。

 ところが、水納島に越してきてから15年経った2010年のこと。

 例年だったらありえない「1月の海水浴場でダイビング」をしてみたところ、なんとなんと、思いがけずもこのクジャクスズメダイと遭遇したのだった。

 潮が引けば波打ち際から数mほどのところである。

 まさかこんなところでこんなレアものと出会えるとは、夢にも思っていなかった。

 それもこれも、ふと海に行こうという気になるほどにポカポカ陽気に包まれた、真冬とは思えないその年の1月上旬の天候のおかげだ。

 その時撮ったのが上の写真で、容姿にはまだ幼さが残る。

 このあと成長すると、もう少し上下のヒレの両端が伸張するはずだ。

 ちなみに、これまでワタシがクジャクスズメダイを観たことがあったのはモルディブでのことで、それはこういう色だった。

 彼らは海域によって体色が異なるのだ。

 実際、これまで日本で撮影されているらしき図鑑のクジャクスズメダイの写真に比べると、このたび発見したクジャクスズメダイはブルーが淡いようにも見える。

 この若いクジャクスズメダイも、成長するともう少しブルーが濃くなるのだろうか。

 成長を追い続けられればいいなぁ……

 ああしかし。

 残念ながらこのクジャクスズメダイは、2010年のシーズンインを迎えることはできなかった。

 やはり本来の生息場所ではなかったのが災いしたのだろうか。

 それにしても、桟橋からすぐの海水浴場でクジャクスズメダイとは。

 遠目にルリスズメダイと思い込んでスルーしなくて良かった……。