全長 10cm
気持ちやや浅めかな、という程度の違いはあるけれど、ナミスズメダイと似たようなところに住んでいる。
すなわち、リーフエッジからリーフ際付近。
メスに産ませた卵をオスが守る一連の様子も似ていて、水温が高い時期なら、岩肌や死サンゴの表面、塊状サンゴの裏側に産ませた卵をオスがセッセと世話している様子をほぼいつでも見ることができる。
ハマサンゴらしき死サンゴの表面にビッシリ産みつけられてある卵をケアするオス。
上の写真の卵たちはすでに発生が進んで黒っぽくなっているけれど、クラカオスズメダイの産みたて卵は白っぽい。
うーん、見るからに美味しそう……。
人間が観てさえそうなのだから、魚にとっては栄養価満点のなによりの御馳走であることは間違いない。
なのでクラカオスズメダイのオスは、ここに近寄る他の魚を激しく撃退する。
また、人知れずジワリジワリと卵を求めてヒトデが這い進んでくると……
オスはヒトデをカプッとくわえ、リーフの下に落っことす。
繁殖期のオスは、日がな一日卵の番をしていなければならない。
不思議なことに、同じクラカオスズメダイでも卵を守る熱意には個体差があるようで、我々ダイバーが近寄ったらあっという間にその場を離れるあきらめのいいヤツがいるかと思えば、自分の何百倍はあろうかという人間に対して最後まで(つまりダイバーが立ち去るまで)攻撃をしてくるタフガイもいる。
やはりそんなタフガイが守っている卵のほうが、ヘナチョコオスに比べて数が多いような気がする。
メスが頼りにするのは、イケメンでもリッチマンでもなく、力のあるオスなのだ。
繁殖期が始まってしばらくすると、最初に孵化した世代がチビターレになってチラホラし始める。
体にモヤッとした線が入っていないからニセクラカオスズメダイでは?
実はクラカオスズメダイのチビターレには、オトナのようなモヤッとしたシマシマが入っていない。
このチビターレがちょっと成長すると…
まだ縞は入らない。
ここからもっと成長すると……
お、うっすら縞模様が。
それからしばらくすれば……
まだサイズは5cmほどながら、ようやくオトナっぽい縞々模様になる(一連の成長段階は同一個体ではありません)。
水納島ではリーフ内でしか観られないニセクラカオスズメダイも含めたクラカオスズメダイの仲間は、けっして多数で群れ集うわけではないけれど、ヤマブキスズメダイにしろナミスズメダイにしろ、じっくり付き合ってみるとけっこう楽しい姿を見せてくれる。
そして今日もまた、クラカオパパは太陽にほえる。