全長 5cm
まぁ、なんとド派手な色。
麗人と呼ぶにはあまりにもケバイ。
しかし水中では最初に赤系の色が吸収されるので、実際に海の中でこのクレナイニセスズメを観ると、意外や意外、なかなか落ち着いた色合いに見える(↓この画像は、肉眼で見える色に近くなるよう加工したものです)。
この魚を初めて海の中で見て、あとで図鑑で調べようとしても、それがこのクレナイニセスズメだとはとうてい気づけないだろう。
水中でライトを当てるとガラリとイメージが変わるので、体験ダイビングのゲストにご覧いただくことが多い魚でもあった。
派手な色をしているくせに、彼らがいるところは暗がりで、リーフ際ならオーバーハングの陰などを除くとよくチョロチョロしている。
単独で暮らしているようながら、わりと近いところにほかの子の姿も見える。
毎年梅雨頃になると、チビたちの姿が現れ始める。
オトナに比べ体に比した目の割合が小さいので、本来ならもっと可愛く見えそうなものなのに、クレナイニセスズメはチビでもやはり眼光はスルドイ。
老いも若きも暗いところにいるため、その姿を光の下で見ようとライトを当てると、クレナイニセスズメたちは本当の姿=派手な色を見られたくないのか、恥ずかしそうに一目散に暗闇に逃げ込む。
だったらもっと地味な色にしていればいいのに……。
ピュッと逃げてしまっても、そのままジッと待っていると……
やがておずおずと、気弱そうに顔を出すクレナイニセスズメ。
光は苦手なようながら、ライトを当てないで近づくと、果敢にこちらを威嚇する仕草すら見せることもある。
オトナになっても5cmほどと小さく、そのうえ派手なカラーのクレナイニセスズメだけど、基本的にニセスズメの仲間は目が前方に向かって尖っている(?)ので、前述のように眼光はかなりスルドイ。
観賞魚の世界におけるクレナイニセスズメは、昔から「丈夫で飼いやすい魚」と認定されている一方、同じ水槽で飼う魚には配慮が必要なほどやたらと気が強くてケンカっ早いことでも知られている。
こんな可憐な魚なのに、ライトを当てるとすぐに逃げるのに、ホントに気が強いの?
あ………たしかに気が強そう。
体のわりに口がでっかいや。
甲殻類食だというけれど、小さな幼魚くらい、軽く食ってるな、こりゃ…。
※追記(2023年7月)
まだ水温は低い4月のこと(2023年)。
リーフ下でふと目をやったクレナイニセスズメの印象がどこか違ったのでじっくり観てみると、そのクレナイニセスズメはお腹がプックリ膨れていた。
各ヒレも普段見る姿に比べて随分赤っぽい。
産卵前のメスはこうなるのだろうか?
そういえばクレナイニセスズメって、どのような繁殖生態なんだろう?
産卵どころか、オスがメスにやる気を見せる(もしくはその逆の)シーンすら、これまで観たことなかったなぁ…
…ということがあって、頭の隅に「クレナイニセスズメ」という信号が明滅していたからだろう、依然水温は低いままのGWに、妙な動きをしているクレナイニセスズメに目が行った。
クレナイニセスズメといえば、岩陰の暗がりでチョロチョロしていることが多いのに、この妙な動きをしていた子は、わざわざ明るいところに出てきてしきりに上下にクイックイッと動いていたのだ。
その動きで気を引いているつもりなのかどうか、すぐ近くの暗がりポジションにいるもう1匹のところへ。
普段はそれぞれ単独で暮らしているクレナイニセスズメなので、このように2匹で意味ありげに行動を共にするシーンを目にするチャンスは多くはない。
近くにはもう1匹いて、このあと何か起こりそうな気配もある。
そこで、続きは動画で追ってみることにした。
冗長な動画をいちいち観ていられないという忙しい方のために、あらかじめ流れを説明しておくと…
…という一連の流れになってます。
はたしてこの思わせぶりで意味ありげなクレナイ1号の一連の動きは、 いったい何だったのだろう?
追い払われる形で退散したクレナイ1号ながら、懲りずにすぐさま同じ動きを明るいところで見せ始めた。
すると…
やっぱり3号に追い払われる1号。
それどころか、付近のホシニセスズメにまで邪険にされる始末…。
単に妙な動きをしているだけの、世間のつまはじき者なのだろうか?
クレナイ1号にちょっかいを出されていたクレナイ2号は、他の2匹に比べると小柄だったってことを考え合わせると、クレナイ3号の傘下にいる妙齢のメスに、1号がちょっかいを出していた…ってところなのかも。
モテモテのメス、そういう目で観ればなかなかの岩陰小町ぶり。
さぞかし通りすがりの男心を狂わせ続けているのだろう…と観ていたら…
…怒られた。
以上は思い込みでオスとメスを決めつけているものの、ひょっとすると逆ってこともあるかもしれない。
そういえばお腹ポンポコリンの子は、クレナイニセスズメにしてはでっかかったものなぁ…。