全長 15cm(写真は3cmほどの幼魚)
相当昔の図鑑には、この魚はキンセンスズメダイという名で載っていることがある。
もちろん今の図鑑には、そのような名前はどこにも見当たらない。
もとよりそれは、昔「いなかっぺ大将」の主題歌を歌っていた吉田よしみが、現在は天童よしみと名を変えて活躍しているのとはわけが違う。
今のようにダイバーによる観察例などほとんど無かった昔には、まさかこの魚がオトナになるとあんな姿になってしまうなんて、誰も夢にも思わなかったため、オトナとはまったく別の魚として扱われていたのだ。
そりゃそうだ、こんな1cmにも満たない可憐な幼魚が…
成長すると15cmもある↓こんな姿になってしまうなんて………
……いったい誰が想像しえたろうか。
たしかにオトナは、「黒」スズメダイ以外のなにものでもない(実際は濃紺ですが…)。
クロスズメダイはオトナも子供も群れることはなく、それぞれ単独で暮らしている(スノーケリング業者が安易に餌付けしているリーフ際では、オトナが集まる傾向がある)。
リーフ内やリーフ上の浅いところでサンゴに寄り添うように暮らしているチビターレは、毎年GWくらいになると、リーフ際のサンゴの上に米粒大のチビチビがポツポツ現れ始める。
それが15mmくらいになると、それ以前にはほとんど無かった尾ビレ上下端の黄色い模様がクッキリ出てくる。
ただでさえ可憐な色柄なのに、穂先がきれいなサンゴの上に居てくれると……
さらに可憐さパワーアップ。
一方オトナはといえば、リーフエッジ付近で悠々とあたりを徘徊している。
こんだけ大きいと、コソコソ逃げ隠れしながら生きていく必要はないようで、ダイバーが近くにいても実に堂々としている。
デバスズメダイよりもまだ向こう側にいるのに、このデカさ。
このオトナ仕様になるタイミングには個体差があるものの、だいたい5cmオーバーになるとスイッチが入るらしい。
だからオトナ仕様のなかには、小型のものもいる。
これは6〜7cmの子で、ヒレのバランスや形状に、まだ幼魚時代の名残りが観られる。
その少し前くらいの段階はこんな感じ。
ゲスト案内中のフリータイムに、コンデジでとりあえず撮っておいた証拠写真。
こういう段階があると、オトナの姿を見せつけられても、ああ、そうなのね…と納得もできる。
ただしこの黒ずんだ幼魚期間は束の間で終わるらしく、そうそう出会うチャンスが無い。
その後何年も経ってから、ようやくセカンドチャンスが訪れた。
前回よりも幼魚に近い色合いながら、これから黒くなろうとしている様子がうかがえる。
この時もゲスト案内中のフリータイムだったため、ポッケの中のコンデジでの撮影しかできなかった。
どうせならちゃんとしたカメラで、しっかり残しておきたい。
セカンドチャンス君がいたのは、普段からちょくちょく行くリーフ上だったから、念のために翌日デジイチを用意して勇躍同じ場所に潜りに行ってみると…
Gone。
というか、ほぼ真っ黒になっている、ほぼ同サイズの小ぶりなクロスズメダイのオトナがいた。
これって同じ子なんだろうか。
クロスズメダイの黒になりかけの個体というのは、目撃例がかなり少ないという話なのだけど、ひょっとして、クロスズメダイ幼魚が黒くなる前の中間段階仕様でいる期間って、思っていた以上に短いのかも…。
黒くなり始めて、翌日にはもうほぼほぼ黒くなっているとか?
昨年(2019年)出会ったクロスズメダイのオトナは、オトナの人生最小級だった。
海中で5cmほどに見えたから、実際は4cmもないはず。
前日までは幼魚模様だったかもしれない。
それにしても、上のオトナになりかけの子にしろ、これよりも大きく育っている幼魚もザラにいるというのに、このサイズでもう真っ黒けだなんて。
いったい彼に何があったのだろう?
幼魚模様のこれくらいのサイズの子なら、縄張り=行動範囲がせいぜいサンゴ群体2〜3個分ほどとかなり限られているものなのに、この5cm未満のオトナときたら、やたらと広い範囲を泳ぎ回っていたのも興味深かった。
体の色の変化で自覚が芽生え、行動もガラッと変わるらしい。
ひょっとしたら、朝9時過ぎでややアンダーだった↓この子も、翌日には黒くなっているかもしれない?
いずれにしても、クロスズメダイの幼魚もオトナもそこかしこで見かけるというのに、中間段階セミブラックを目にする機会がほとんどないというのはたしかな話。
↑この両者の階となる中間段階セミブラック。
その姿を見かけたら、なにをさておいてもまずは激写を!