全長 35cm
水納島で見られるアジの仲間といえばたいてい体高が高く、鯵の開きのような形をしている。
ところがたま〜に、鯵の開きになる前のマアジのようなスラリとした体型のアジに出会うことがある。
出会う機会はそう多くはなく、いたとしても数匹で寂し気に泳いでいる程度ながら、マアジ体型のアジは珍しいだけにちょっとばかり目を引かれる。
マアジに比べると、もっとツムブリっぽいというかなんというか、体型的にも色味的にも涼し気な感じで、黄色い尾ビレがよく目立つ。
とはいえ30cmちょいの魚が数匹泳いでいる程度では、目を引かれはしても目を瞠るほどのものではない。
ところが。
ごくごく稀に、大集団になって豪然と眼前を駆け抜けていくことがある。
こういう魚群がグルクンのようにいつでもどこでもお馴染みの海ならいざしらず、水納島でとなると俄然盛り上がる。
ただし携えているカメラがおあつらえ向きのレンズ装備ではなかったがために、千載一遇のチャンスはまったく活かせなかったけど…。
撮った写真を観てみると、やはり尾ビレは黄色い。
このテのアジといえばムロアジかな…と長い間認識していたため、これまでずっと、ゲストのみなさんにはそのように紹介してきた。
しかしこの上下ともに黄色い尾ビレや体側に入る1本のブルーラインという特徴を元に調べてみたところ、どうやら彼らはムロアジと同じ仲間のクサヤモロっぽい。
ムロアジの仲間はマアジよりも脂肪が少ないため、くさやの原料として理想的なのだそうで、それゆえのこの名前なのだろう。
現れるときは彼らだけで群れることが多く、もともと大きなものに寄り添う習性があるのか、短時間ながらもグルリと取り巻いてくれることもある。
せっかくのチャンスにもかかわらず、画角の狭いレンズゆえに群れ全体を撮れず、おまけに興奮のあまりついつい真横から光を浴びせてしまい、キンキンビカビカの写真になってしまった。
そんなクサヤモロの群れに、今年(2021年)久しぶりに遭遇!
しかも、おあつらえ向きにフィッシュアイレンズ装備のカメラを手にしている時に!
…ああしかし。
ツムブリの群れと行動を共にしていた彼らは、まったく近寄らせてくれなかったのだった…。