全長 40cm(写真は2cmほどの幼魚)
パンダのおかげか、そもそもヒトの中の遺伝的なものなのか、白黒ツートンカラーの生き物はとかく人気者になる。
このマダラタルミも、まさにパンダのような白黒の塗り分けで、2cm前後の体をクネクネクネクネさせて泳ぐ様がまた愛らしい。
が。
それはあくまでも幼魚の頃までのこと。
ここまでパンダっぽいのは2cmくらいまでのことで、10cm弱になると……
まだまだ白黒だしクネクネ泳ぎも多少はしているんだけど、チビターレの頃のような愛らしさは薄れる。
ただしこれくらいの頃の顔を正面から観ると…
弓の的のようになっていて面白い。
2cmほどのチビターレの頃はさすがにサンゴなどに寄り添っていることも多いとはいえ、白黒でクネクネ泳いでいると目立ってしょうがない。
白黒でクネクネすることに、他の魚に襲われないためのヒミツでもあるのだろうか。
もっとも、傍でクネクネされると他の魚たちも時にはイラッとくるらしく…
…クロメガネスズメダイに追い払われていることもあったけど。
効果のほどはともかく、観ていると一生懸命っぽくてかわいいそのクネクネには、いささか困ることがある。
いざその姿を写真に撮ろうとしても……
各ヒレを閉じた状態でしか撮らせてくれないのだ。
小刻みに立ち止まるたびにヒレを開くとはいえ、なぜだか憑りつかれたように泳ぎ続けているときに、冒頭の写真のようなヒレ全開ポーズを撮るのは奇跡に近い。
サンゴなどに寄り添って気を許しているときが狙い目だから、そこで慌ててクネクネを始めてしまうような驚かせ方をしては元も子もなくなる。
ずっとクネクネしていたマダラタルミも、15cmほどになるとクネクネしなくなり、ただの白黒の魚になる。
でもまだ白黒でいてくれるだけ、愛嬌があるというもの。
これがさらに成長すると……
白黒はやがてくすみ始め(右)、ついにオトナになると(左)、どこぞの工事現場で見つかった不発弾のような色になってしまう。
ここにパンダの面影を探すのは至難のワザだ。
この不発弾1匹だけだと完全スルー間違いなしの魚になるところ。
ところがもっと南洋の海に行くと、この不発弾がとてつもない巨群を作っているようだ。
近年はその巨群が集団で産卵を行う様子がかなりメジャーになったこともあってか、自然系の番組で産卵シーンを観ることができるようにすらなっているほどだ。
残念ながら本島近海ではそのような巨群は観られず、マダラタルミの分布域的には北の辺境も辺境なのか、1匹のマダラタルミにすらそうそう出会えるわけではない。
一大産卵ショーが行われるような海から、卵もしくはチビチビ幼魚が流れ着いてくる程度ということなのだろう。
そこにもここにもあそこにも…とマダラタルミのチビターレが観られるようになるためにも、南洋の不発弾たちには精力的に爆発してもらうしかない。
ところで、不発弾オトナがたくさん観られる海だと、チビターレもたくさん観られるんだろうか??
※追記(2021年12月)
今年(2021年)は、どううやら南洋の不発弾たちが盛大に爆発してくれたらしい。
というのも、これまで水納島では数年に1度会えればラッキーてなくらいのマダラタルミ・チビターレだったのに、今年はどういうわけかこっちで1匹あっちで1匹…
昨日も1匹今日も1匹…
…という具合で目撃が相次いだのだ。
しかも、挙句の果てには……
ダブルヤング!
束の間のことではあったけれど、まさか2匹が同じところにいるなんて。
この調子でますます南洋不発弾の爆発が繰り返されれば、やがて水納島周辺でもマダラタルミの大産卵ショーが観られる日が来るかもしれない?