水納島の魚たち

マルスズメダイ

全長 4cm(写真は15mmほどの幼魚)

 スズメダイ類には、子供からオトナになるにつれ劇的にその体色が変化するものが多い。

 その一方で、このマルスズメダイなどはオトナと子供で色彩的な違いはほとんどない。

 ただしオトナに比べ、幼魚の頃のフォルム(写真上)の可憐なこと、清楚なこと!

 長くスラッと伸びた尾ビレに、思わず酔いしれてしまいそうになる。

 冒頭の写真よりももっと小さな1cmほどのチビターレはまだ尾ビレが伸びていないものの、全体的にプリティオーラを放っている。

 ただ、サイズがサイズだけに、クラシカルアイが入ってきた方には、そのスラリと長い尾ビレの先まで観えないかもしれない、という弱点はある。

 じゃあオトナを見ておくか……

 と目を転じても、ここまでオトナだと、さすがに幼魚ほどのプリティインパクトは無い。

 なので極チビではないけどオトナになりきっているわけでもないヤングマルちゃんを観てみると…

 体とのサイズ比で尾ビレはまだスラッとしていて、顔つきも可愛い。

 やっぱ、体に対する目の比率が左右しているのかも。

 一方、可愛さでは子供に太刀打ちできないオトナながら、オトナにはオトナの興味深い姿がある。

 恋の季節を迎えたマルスズメダイのオスは、かなりのやる気モードになっており、体の色も遠目にそれとわかるほどに濃淡が出ているのだ。

 普段の様子からは想像できない激しい動きをして、メスにアピールしまくっているオス。

 興奮モードに身を包み、メスを自慢の巣穴に誘い込み、そこで産卵を促す。

 産卵床は基本的に入り口が狭いサンゴ下の陰や岩穴に設けるようなので、産卵の一部始終を目にすることはできないのだけれど、興奮モードのオスの動きには、やはり「ここ一番!」という気合いが感じられるのだった。