水納島の魚たち

メガネアゴアマダイ

全長 10cm

 水納島で観られるジョーフィッシュたちのうち、真っ先に和名がついたメガネアゴアマダイ。

 和名が無かったその昔は、目元の色合いから、リングアイ(ド)ジョーフィッシュと呼ばれることもあった。

 あいにく水納島で観られる彼らの生息水深は深く、最も浅くて水深25mほど、そのうえすぐに引っ込んでなかなか出てきてくれないから、そうそうお近づきにはなれない。

 また、砂地のポイントではまず観られず、見かけるのは岩場のポイントの、崖状になっているリーフが途切れるあたり、その先は礫混じりの砂底になるという場所に巣穴を作っている。

 普段はそういうところをなかなか訪れないから出会うチャンスもさほどなく、これまでゲストにご案内したのは数えるほどでしかない。

 もっとも、ご案内したとしても、警戒心が強いためにウカツには近寄れず、限られた時間内で撮れる写真といえば、せいぜい↓この程度で終わる。

 どんなに可愛くとも、これじゃあ可愛さを堪能できるはずはなし。

 ところがネット上をはじめとするメガネアゴアマダイの写真を観ると、なかなかフレンドリーそうな顔をしたステキな写真がズラリと披露されている。

 みんな相当深いところで粘っているんだなぁ……

 …と思いきや。

 どうやら海域によっては相当浅い所にもいるようで、20m未満の水深で撮影されているものがけっこう多い。

 ようするにメガネアゴアマダイたちは、深さにこだわりがあるわけじゃなく、住処とするための条件に合った地形が肝心であるらしい。

 彼らの条件に合う場所が、水納島の場合は残念ながら随分深いということのようだ。

 そんな深いところにいるメガネアゴアマダイではあるけれど、ジョーフィッシュといえばこの種類しか目にしたことがなかったその昔のワタシは、彼らと少しでもお近づきになろうと、水深30mの棚からストンと落ちる崖の下にいる彼らに会いに行った。

 すると……

 ジョーフィッシュと一緒に住んでいるエビがいた。

 当時はまだダイビング雑誌などを手に取って眺めるマットーなダイバー(?)だったので、ジョーフィッシュと一緒に暮らすエビがいることを知っていたし、写真も目にしたことがあった。

 なので、それを初めて観た!というヨロコビとともに撮影をした。

 2000年のことである。

 その後現像が上がり、現在の徒然海月日記の前身である「最近のログ」コーナーで「こんなんいました〜」的に取り上げたところ、当時まだ「巨匠」への道を昇り始めたばかりだった現巨匠・コスゲさんから、

 「このエビはまだ日本では撮影されてないはずだ」

 というご指摘を受けた。

 言われてみれば、雑誌などで目にしていた写真は、すべて海外で撮られていたものっぽい。

 おおっ!

 ということは、ワタシは日本国内で初めてこのエビを撮ったということではないか。

 遅まきながらの興奮モードで、当時当サイトにあったニュースコーナーでも取り上げた。 

 そうやって超局地的にささやかに慎ましく盛り上がってから1年ほど経った頃。

 2001年9月の琉球新聞に、こんな記事が出ていた。

 記事を読んだワタシが、

 「『初』やないがな!!」

 とツッコミを入れたのは言うまでもない。

 ところで、今改めて当時の記事の切り抜き(もうすっかり黄ばんでます)を読んでみると、なんと撮影者は現在石垣島で変態社会教を布教しておられる教祖のタラオさんではないか(ワタシ自身は面識はないけど、当店ゲストに信者が多いため、勝手に教祖に認定)。

 当時は奄美在住のガイドさんだったらしい。

 なんてことだ、あのときもっと熱烈にマスコミにアピールしていれば、ワタシは(このエビ限定で)教祖の一歩先を行くことができたのに!!

 ま、巨匠に言われて初めて国内初だということを知ったくらいだから、写真も知識も所詮その程度ってことなんですけどね…。

 それはともかく、奄美では水深16mでこのメガネアゴアマダイ(とエビちゃん)に会えるらしい。

 そりゃぁさぞかしじっくり粘れることだろうなぁ…。

 ちなみに当時当サイトでジョーフィッシュのお友達として紹介していたこのエビは、その後ムカシカクレエビ属の1種というところに落ち着いた。

 現在和名がつけられているのかどうかは知らない。

 さらにちなみに2019年現在、いろんな方々が撮られたこのエビ&ジョーのステキな(マニアックともいう)写真を、ネット上でいくらでも観ることができるようになっている。