全長 6cm
その名のとおり、もっと南の海に行けば個体数は多いらしい。
聞くところによると、フィリピンはセブの海では、かなりフツーのテンジクダイの仲間なのだとか。
あいにく水納島ではそうそう目にする機会はなく……
いや、彼らがいそうなところを探せばけっこうそこかしこにいはするものの、リーフエッジの壁に穿たれた空隙などの暗がりに潜んでいるため、そういったところに光を当てて覗き込まないかぎりその存在に気づけない。
その壁に穿たれた空隙がおあつらえ向きの個室になっていて、個室ごとに1匹ずつチョコンとたたずんでいる。
↑この個室から少し離れたところにも……
やっぱり個室。
こういう生活をしていて、いつどこで伴侶と出会っているんだろう?
あ。
彼らの夢は夜ひらく……。
昼と夜とでは、彼らの生活はまったく違っているのだ。
日中は暗がりにいる彼らは奥から外を伺うような体の向きでいることが多いから、せっかく彼らに会えたとしても…
正面顔しか拝めないかもしれない。
各ヒレが赤く染まっているように見えるのは、周囲の岩肌に付着している石灰藻の赤が反射したものなのかと思いきや、これはよく似ているタスジイシモチと容易に区別できるミナミフトスジイシモチの特徴であるらしい。
体には金のストライプ、ヒレはメタリックレッドだなんて、およそマイナーテンジクダイらしからぬ艶やかな配色。
それもこれも、その存在に気づけてこそなのは言うまでもない。
※追記(2023年5月)
いつ見ても個室で独身生活を送っているミナミフトスジイシモチ、夜行性だから夜になれば外を出歩いてブイブイ言わせているのだろうけど、日中にペアでいるところを目にしたことがないってことは、ミナミフトスジイシモチたちはみんな、ワンナイトラバーなのだろうか。
というか、ミナミフトスジイシモチがペアでいるのはもとより、卵を口内保育しているのも観たことがないなぁ…
…と思っていたところ、さすがタマタマシーズンが開幕する春(2023年)、個室をチラ…と覗き見てみると、ミナミフトスジイシモチの口が卵で膨らんでいた。
初めて目にするミナミフトスジイシモチの卵保育である。
体のサイズ的に、おそらくキンセンイシモチ同様5分に1回くらいはフガフガしてくれるに違いない…
…と信じて待っていると、
5分とたたずにフガフガ♪
せっかくなら正面から歌えバンバンバン状態で卵を観てみたい。
この調子なら、タイムリミットまでもう1回くらいチャンスがあるだろう。
はたしてチャンスは…
…到来!
〜♪歌えバンバンバンバンバーン♪
例によっていつものごとく、タマタマアップ。
お目目キラキラの卵たち、まだ孵化するまでには数日かかるだろうか。
卵が孵化するまでろくろく食事も摂れないのだから、イクメンパパの苦労も大変だ。
たとえ相手とは一夜限りの関係でも、ミナミフトスジイシモチはちゃんと結果の責任を取るワンナイトラバーなのである。