全長 35cm
テングハギの仲間の中では、群を抜いて知名度が高いかもしれないミヤコテングハギ。
地味な色合いの種類が多いテングハギ属の魚たちでは異例な、その独特の顔の色合いが人々の目を引くのだろう。
その顔を、ジャングル大帝でお馴染みの(若い人にはライオンキングでお馴染みの)マンドリルに例える人も多い。
暮らしている場所も特殊な場所ではまったくなく、リーフエッジ付近の浅いところでごくごくフツーに観られる。
個体数も多く、リーフエッジのそこかしこにいるといっていいくらいではあるけれど、テングハギやテングハギモドキなどのように密集隊形で多数が群れることはない。
それでも、藻食性の魚だからか、食事の際には集まっていることもあり、10匹近くが集団になっていることもある(繁殖期に関係しているのだろうか?)。
ただし、見た目の派手さとは真逆のシャイな性格のため、なかなかお近づきになる機会がない。
特にオトナはその傾向が顕著で、他の魚を観ている時は目と鼻の先まで来ていることもあるのに、いざ注目するとたちまち身を翻して逃げていく。
そのため、たくさんいるにもかかわらず、彼らをじっくり眺める機会は思いのほか多くはないんだけど、その体色の濃淡を自在に変えていることはわかる。
↓このように黒っぽい色をしているかと思えば……
たちまち淡い色にもなる。
濃淡を変えるのは体だけではないようで、尾ビレにまで細かい神経が行き届いている。
ミヤコテングハギはオトナになると体はもう少し長くなって、尾ビレの上下端がスラッと伸びる。
こうして見るとピロピロ伸びている部分は黄色っぽく見えるけれど……
このようにむしろ黒く見えていることのほうが多い。
また、尾ビレの縁の黄色い模様も、時には……
黒くなっていることもある。
そうかと思えば、同サイズに育っているのに、この尾ビレの上下端が伸びていない子もいる。
その子もさらに成長すれば伸びるのか、個体差なのか性差なのか、ワタシは知らない。
とにかくお近づきになってくれないので、ミヤコテングハギの世界を垣間見るのはムツカシイ。
いずれにしても、マンドリルな顔の模様はほとんど変わらない。
ミヤコテングハギの繁殖期は、やはり初夏くらいなのだろうか。
夏場になると、サンゴが群生する浅場などに、やけに黒っぽくなっている5cmほどのチビたちが、10匹前後で集まっている様子を観ることがある。
それらが冬の間に成長したものなのか、春先には10cm弱のチビが、オトナっぽい色になって(でも尾ビレはピロピロ伸びていない)チョコマカ泳いでいる姿を観ることができる。
探ればもっと楽しいことがいろいろありそうなミヤコテングハギ。
ついで…じゃなくて最初からミヤコテングハギひとすじ、くらいにお付き合いすれば、いまだ知られざるヒミツのミヤコテングハギに出会えるかもしれない?