全長 7cm
あらかじめお断りしておくと、水納島でこのモンツキカエルウオを見たいと言われても、そのご希望にはおこたえできない。
だって、いないんだもん。
島の南側のリーフ際あたりにいけばいそうな気はするものの、そちら側は今のところそっとしてある。
じゃあ上の写真はどこで?
何を隠そう水納島で。
フィルムで写真を撮っていた頃だからもう随分昔のこと、普段よく潜る場所になぜだかその年の秋だけ、若い個体が居てくれたのだ。
本来なら居そうにない水深だったから、彼としては居心地はあまりよくなかったのだろうか、1ヶ月くらい同じ場所に居てくれたけど、その後すっかり見られなくなった。
モンツキカエルウオといえば、ダイビング雑誌などで紹介されるようになった当時、多くの方が血眼になってこの魚を探した。
その結果、実はいるところには意外に多くいることがわかったせいか、最近ではあまり騒がれなくなっている。
要は居そうな環境さえ把握すれば、見つけるのはたやすいということなのだろう。
世間では、よく見られるからこそ、いろんな方が撮影する。
でも、その多くはオトナのモンツキカエルウオだ。
カワイイカワイイと言われるからつい錯覚してしまうけど、よくよく見ればかなり変な顔。
ところが冒頭の写真くらい若いモンツキカエルウオは、ホントにカワイイ。
水納島ではこれまでにたった1度だけの出会いであるモンツキカエルウオが、若い若い子だったのはラッキーだった。
※追記(2020年6月)
長い間1度だけの出会いということになっていたモンツキカエルウオながら、スクーバダイビングではなく、リーフ上を泳いでいると出会うチャンスがあることがその後わかった。
それはターボスネイル生息密度調査中のことなので、証拠写真を撮る程度しか時間を掛けられないのだけれど、レギュレーターからの排気音を出さずに観察している分、全身を出したまま巣穴に隠れずにいてくれることもある。
ただし、ターボスネイル生息密度調査時は潮が適度に引いているタイミングのため、たいていの場合彼らがいる水深はとっても浅く、水面下50cm程度のときもある。
この子なんて巣穴に引っ込んでも引っ込んでもすぐに顔を出してくれるお利口さんだったのだけど、さすがにこの浅さじゃ、ファンダイビングで立ち寄ることはできないなぁ…。
水納島のモンツキカエルウオは、居ないのではなく、「居る場所に行けない魚」なのだった。