全長 100cm
このウツボと初めて出会ったときは、ドクウツボの黄色いバージョンかと思った。
しかしよく見ると顔つきが違う。
いったいなんて名前のウツボなんだろうと思っていた矢先、「日本産魚類生態大図鑑」という、書名に漢字10個も費やす巨大な図鑑が東海大学出版会から刊行された。
当時大量魚種を収録する図鑑といえば標本写真ばかりで、その道の方(=変態社会人)以外にほぼ需要はなかったのだけど、この図鑑は書名のとおり大量の生態写真で多数の魚種が紹介されているという画期的なものだった。
その図鑑に、このウツボが載っていた。
おお、ミゾレウツボっていうのか。
何がミゾレなのやら意味不明ながらも正体がわかり、ちょっとばかりスッキリした。
ところがその図鑑が刊行されてしばらく後、かの瀬能先生による当該図鑑の正誤表が闇ルートで出回った。
なぜ闇ルートだったのかはさておき、一連の正誤表によると、このミゾレウツボという名前は不正確であるということで、再び種不明の「ウツボの仲間」に逆戻りしてしまった。
その後時は流れ、いったいいつになったらこのウツボにちゃんとした和名がつくんだろう…と思っているうちに、2019年の年が明けた。
で、おりしも当ウツボコーナーのリニューアル作業をしている最中だったので調べてみたところ、なんと2003年に新種記載報告がなされているではないか。
その名もリュウキュウウツボ。
学名の種小名は、 ryukyuensis になっている。
2003年には名前が、それも沖縄の名が冠された立派な和名が付けられていたというのに、15年もの間まったく知らずにいてしまったとは……。
なんだかクヤシイ。
それはさておきこのリュウキュウウツボ、リーフ際のさほど深くない礫底くらいのところで、岩陰に潜んでいるところをたまに見かける。
本人は潜んでいるつもりなんだろうけれど、黄色い顔は海中ではけっこう目立ち、岩陰にいても潜んでいる効果があまりない。
色味的に目立っているし、こうして口を開けると凶悪そうながら、見かけによらずわりとビビリだから、身を乗り出してくることがない。
でも稀にこういうこともある。
若いオトヒメエビのクリーニングケアを受けているところ。
よく目にするのは野球のバットくらいの太さのサイズなので、たとえ身を乗り出してくれてもマクロレンズ装備だと顔しか撮れない。
その点、過去に一度だけ出会ったことがあるマッキー太細両用マジックペン級の細さの子は、とってもコンパクトサイズだった。
体が小さいだけにちょっとした小岩の下に隠れていた程度だったおかげで、岩の下に収まっている全身を観ることができた。
こうして観ると、「黄色」なのは顔周辺だけで、体のほとんどは黒っぽい模様が入っていることがわかる。
彼のスター性を維持するには、やはり顔だけ出していたほうがいいのかもしれない。
この鮮やかな黄色い顔!
そのうえ願ってもない「リュウキュウ」ウツボ襲名とくれば、これで(沖縄限定)スター街道まっしぐら確定?