水納島の魚たち

ネズスズメダイ

全長 5cm(写真は15mmほどの幼魚)

 ルリスズメダイの仲間には浅いところを好む種類がわりと多く、なかでもこのネズスズメダイは仲間内の最浅記録保持者であろうと思われる。

 なにしろ彼らときたら、潮が引いてできる水溜まり程度のところでもたくさん観られるほどだ。

 むしろそのあたりが生息水深の深いほうの限界ラインのようで、リーフ内といえども波打ち際から少し沖に行くと、もう観られなくなる。

 なのでフツーにダイビングをしていると、たとえビーチエントリーでもまだフィンもマスクも装着していないくらい浅いところかもしれないから、まず出会う機会がないスズメダイといえる。

 ネズスズメダイと出会うためには、海底に腹ばいになってもタンクが水面から出てしまうほど浅いところで、打ち上げられたトドの死体のようになりながら観察する必要がある。

 何もそこまでしなくとも…という話ではあるけれど、そこでチビターレに出会えれば、その甲斐あった!とヨロコビを味わうことができる。

 これくらい小さなチビターレ(1cmちょい)なら、ブルーのラインが太く輝き、額にV字ラインが煌めいている。

 残念ながらこのV字ラインは、成長とともに消えていく。

 2cmほどになると、もう↓こんな感じに。

 さらに成長すると、かろうじて頭部にその痕跡を残す程度になる。

 完熟ネズスズメダイは、スズメダイの仲間には珍しく幼魚よりも明るい色合いになる。

 チビターレに比べて行動範囲は(横に)広く、あっという間に遠くまで逃げてしまうから、なかなかゆっくり観察させてはくれないオトナたち。

 とはいえこの白っぽいスズメダイを観るために、わざわざトドの死体のようにはなりたくないかも…。

 とにかくそんなわけで、成幼問わずとっても浅いところ限定スズメダイだから、ボートダイビングでの出会いは期待できない。

 ボートダイビングオンリーのダイバーには、ある意味レアなスズメダイなのだ。

 トドの死体にはなりたくないけど、チビチビたちは見たいかも…という方は、潮が引いているときのタイドプールに是非。

 V字ラインを見るなら、むしろタイドプールを上から眺めたほうが早いはず。