全長 4cm
水納島の場合、オドリハゼはそれほど珍しいハゼではない。
リーフエッジの壁がオーバーハングしていて陰になっているあたりを探せばたいてい見つかる(でも観たい時にはなかなかいなかったりするけど)。
他所でもおそらく同程度に観られるとは思うのだけど、なぜか希少種扱いを受け、重宝されていた頃もあった。
さしてレアではないことが明らかになっている今ではレアもの信仰変態社会での人気は薄れているのかもしれないけれど、巣穴からちょっとだけ浮き、ヒラヒラユラユラと胸ビレを使って踊っている姿は愛らしいから…
…今もなお一般健全ダイバーには人気が高いオドリハゼ。。
でもあまりにもシャイな彼らは、ほんの少し近づくだけで、ヒュルルルルと穴の奥に入っていってしまう。
そこであきらめてしまえばそれまで。
あきらめずにいったん後退し、しばらく待っていたら、一緒に住んでいるエビに押されるようにおずおずと出てくるオドリハゼの姿を観ることができるはず(出てこないこともありますので、残圧チェックはお忘れなく…)。
そんなシャイなオドリハゼにあっても、なかにはわりとフレンドリーな子もいて、付き合い方次第ではわりとお近づきになれることもある。
ときにはオドリハゼが何かを食べるシーンを観ることもある。
ホバリングするタイプのハゼではあるけれど、ヤシャハゼなどのように、漂うプランクトンを食べる様子を観たことはないなぁ…と思っていたところ、どうやらオドリハゼは、巣穴付近のナニヤラを食べているようだ。
観ている間に何度か、こうして巣穴周辺に口をつけていた。
食事のあとは……
…口元がややだらしなくなる。
オドリハゼがパートナーにしているのは、以前までロッテリアテッポウエビという通り名があったブドウテッポウエビだ。
オトナになってもせいぜい4cm程のオドリハゼに比べ、このテッポウエビは随分大きい。
なのでセッセと巣作りに励んでいる際のこのエビときたら、棒手ふりで魚を売り歩く一心太助のごとく、「邪魔だ邪魔だ、のいたのいたぁ!!」とばかりにオドリハゼをはじき出すようにして作業をしている。
ダイバーを警戒して、巣穴に引っ込もうかなぁ、どうしようかなぁ…と逡巡しつつ引っ込みかけているオドリハゼが、巣作りに励むブドウテッポウエビによって外に押し出されてくる、ということもよくある。
ただしブドウテッポウエビはオーバーハングした岩が庇になるようなところに巣穴を作るため、そこに住むオドリハゼを観るに際しては、ポジションどりが限られることも多い。
そのためガイドの指差す方向を見ているつもりでも、いっこうにオドリハゼの姿が見えない、ということもある。
そういう場合は、ガイドが指差す場所を別角度から観るのではなく、ガイドと同じ側、同じ方向、同じ高さから観ればよい。
そのようにしてオドリハゼがどういう魚でどういうところにいるかがわかってくると、そのうちこういうこともあったりする。
オドリハゼがこの距離でお隣さん同士。
オドリハゼが観たいッ!というゲストにご覧いただこうとリーフ際を探してみたら1匹も見当たらない…ということもあるというのに、誰も欲していない時に限ってインフレダンシング。
ここまで近くなくとも、わりと近距離に2匹がいることはたまにあるけれど、ヤシャハゼのようにオドリハゼがペアで同じ巣穴にいるのは、いまだ目にしたことがない。
彼らはどうやって出会い、どのように恋を成就させるのだろう?