全長 20cm
アマダイと名のついている魚はわりと多い。
それらのほとんどは「キツネアマダイ科」に属す魚たちで、京の都で「グジ」と呼ばれ愛されている美味しい美味しい本家アマダイも然り。
ただし本家アマダイは、分類学的にはキツネアマダイ科アマダイ亜科アマダイ属の魚であるのに対し、キツネアマダイやヤセアマダイは、キツネアマダイ科キツネアマダイ亜科キツネアマダイ属になる。
こういう話に免疫のない方は何が何やら意味不明かもしれないけれど、サンゴアマダイ属の魚たちもキツネアマダイ亜科に属する、ということを踏まえておかないと、サンゴアマダイの仲間たちをキツネアマダイと同列に扱うと違和感ありありになってしまうかもしれない。
フィルムで写真を撮っていた頃だからもう随分昔になるけれど、このような深場に潜むサンゴアマダイ類が一世を風靡した時代があった。
多くの変態ダイバーが、なかなか会えないサンゴアマダイ類を求め、憑りつかれたように来る日も来る日も深い海底を目指していたのだ。
ワタシも当時はご多分に漏れずこの手の魚をサーチしていたところ、水納島の普段まったく行かない側の深い深い海底で、アカオビサンゴアマダイがやたらといるのを観たときは狂喜したものだった(狂喜しすぎて写真はない…)。
その点オキナワサンゴアマダイは、この仲間のなかではいわゆる「フツー種」で、ドロップオフが途切れたところから始まるなだらかなガレ場に行けば、たいていそこらじゅうで2匹ずつ仲良くホバリングしている姿を拝める。
あいにく水納島周辺にはオキナワサンゴアマダイが好む環境が適度な水深には無いものの、アカオビサンゴアマダイ、フジイロサンゴアマダイといった、変態ダイバーを禁断の水深へと手招きしている連中に比べれば、よほど観察しやすい水深から観られるのだ。
スター級のサンゴアマダイ類との来たるべき遭遇に備え、まずはオキナワサンゴアマダイとお近づきになっておかなければ。
ところが、遠目に見る時は底から1〜2m上あたりを余裕綽々でホバリングしているオキナワサンゴアマダイたちは、お近づきになろうとするとだんだん底付近に降下し、さらに接近すると巣穴にサッと逃げてしまう。
そのためマイブームがあったにもかかわらず、オキナワサンゴアマダイの写真は2000年に撮った上の写真と、95年に撮った↓この子の写真しかない。
わりとたくさんいるにもかかわらずこの警戒心。
これが、千載一遇一期一会人生最初で最後的出会いのサンゴアマダイ系だったら……。
……写真を撮ろうとしている間に、帰還不能の減圧時間が表示されていたことだろう。
いずれにしても前世紀の話なので、今同じ場所に行ったからといって昔同様フツーに観られるのかどうか。
これを書いているうちになんだか無性に再会したくなったので、そのうち機会を観て再訪してみることにしよう。
※追記(2020年11月)
デジイチを使用するようになった当初は、撮った写真をどのように整理すべきか試行錯誤段階だったので……というか、デジタルだからいくらでもコピーできるのに、フィルム時代のクセでひとつのカテゴリーのみに含めてしまっていた。
そのため、しばらくの間は自分が覚えているからモンダイ無かったのだけれど、その後もう少し便利に画像を整理するようになった一方で、当初のカテゴリーがさっぱり不明になってしまったものもあったりする。
そんなミッシングファイル(?)を久しぶりに発見するたびに、「おお…こんなものも撮っていたのか!」と自分のことなのに驚くこともあるのだけれど、↓この写真もそのひとつ。
オキナワサンゴアマダイのチビたちが集合していた。
オキナワサンゴアマダイを撮ったのはすべて前世紀のこと…と思いこんでいたのに、画像ファイルに記録されている撮影年月日は2009年6月2日のことだった。
オトナが観られる深いところに初夏に訪れれば、チビチビグループも観られるようだ。
※追記(2024年6月)
2022年4月のことだからもう2年も経ってしまっているのに今頃追記ってのもなんだけど、久しぶりにオキナワサンゴアマダイに出会った。
まだ10cmほどの若魚ながら、水納島で観られるオキナワサンゴアマダイにしては異例の水深20mでのこと。
個人的オキナワサンゴアマダイ最浅記録を大幅に更新した瞬間だった。
もっとも、こんな浅いところに1人ボッチで居るというのは、セミで例えるなら地上に出てくるのがフライングすぎ、鳴けどわめけどメスなど1匹もいない梅雨時のうっかり八兵衛ゼミのようなもの。
たとえオトナになるまで成長できようとも、この場に居続けるかぎりパートナーに出会う機会はおそらく皆無だろう。
この少し先にある崖を降りたら、仲間がたくさんいるんだけどなぁ…。