全長 6cm
地名や地方名が冠された名前を持つものが多いスズメダイたちにあって、我らが沖縄の名前がついているのがこのオキナワスズメダイだ。
分布が沖縄に限られているわけじゃなし、いったいどこがどう沖縄なの??
そう問われてすぐさま答えられる人はいないと思う。おそらく名づけた者勝ちだったのだろう。
彼らは潮通しのいいリーフの外縁で、他の多くの小型スズメダイと一緒に群れ集っている。
スズメダイといえばやや丸っこいイメージが普通だけど、このオキナワスズメダイはわりとスレンダー体型で、1匹1匹をじっくり観るとそれなりに美しい。
上の写真の子よりももっとオトナになると、体全体が落ち着いた色になる。
もっと成長すると、若い頃までの細いイメージは消え、小さいながらも貫禄が出てくる。
リーフの上でたくさん群れているのは若者ばかりで、貫禄が出てきたオトナはさほど群れを作っていないような気がする。
逆にもっと幼い頃は、淡く儚く健気で可憐だ。
15mmくらいになると、黄色味がほとんどなくなる。
ただし小さい頃からオトナまで、なかなかじっくりその姿を拝見させてはくれないオキナワスズメダイ。
たくさんでいるわりには彼らはけっこうシャイなので、いざ写真を撮ろうとするとすぐに逃げたり隠れてしまう。
……というか、この子に逃げられたら次の子、それでもダメならまた次の子、とやっているうちに、結局どれも満足に撮れずに終わってしまったりする。
たくさんいることがかえって仇になるのかも…。
なにしろ、こんなに群れているのだから。
ここにいる小魚の、ほぼほぼすべてがオキナワスズメダイ。
もっとも、リーフ上全域に渡ってこのように群れているわけではなく、集団がいる場所は限定的ではある。
それでもやはり、どこで潜ってもたいてい観られるし、浅いところにたくさんいてくれるのだから、じっくりお付き合いしようと思えばいくらでも時間はとれる。
沖縄好きのあなたなら、その名を冠しているスズメダイを一度はじっくり観ておいても損はないはず。
※追記(2022年3月)
オキナワスズメダイといえば、リーフの上で涼しげな群れを作っているもの…と思っていたところ、今年(2022年)3月、まだ水温が低いままの海に潜ったところ、リーフ上でいつものように群れていたオトナたちがグループになって、死サンゴ石が転がる海底に降りてきては、なにやら秘め事でもしているかのようにソワソワしているシーンに遭遇した。
え?なになに、どうしたの?
と様子を見に行くと、彼らはつれなくまた中層に戻っていく。
なんだか仲間はずれにされたような疎外感…(そもそも仲間じゃないけど)。
すると今度はワタシの背後で、また別のグループが海底に降りてきて、同じようにソワソワしている。
そしてこれまた、見に行くとすぐに中層に戻ってしまう。
それを繰り返しているうちに、ワタシの存在などどうでもよくなったのか、見ている目の前でソワソワ…してくれるようになってきた。
石と石に挟まれた狭いスペースや穴などに入っては出てきたりして、その様子は産卵をしそうな雰囲気にそっくりなのだけど、写真を確認してみたところ、輸卵管や輸精管を出している子は1人もいない。
そのソワソワぶりを動画でも。最初はワタシを嫌がってすぐに中層に逃げていたのに、次第次第にカメラに対して威嚇するような動きをするようになってきたオキナワスズメダイたち。
この春の秘め事はいったいなに?
数日後には、産卵祭りに発展するんだろうか。
※追記(2022年12月)
↑このように早春からみんな頑張っていたからだろうか、今夏(2022年)の水納島のリーフ上は、空前絶後のオキナワスズメダイ若魚たちの乱舞シーンとなった。
もともと局所的には多く群れているところもあったオキナワスズメダイたちながら、今年の彼らの量はそれどころではなく、あちこちのリーフ上がオキナワスズメダイ祭りになっていたほど。
近年の夏場のリーフ上といえば、キホシスズメダイの幼魚たちが湧き出でるごとく群れ集っているのが通例だったものが、オキナワスズメダイたちがそのキホシスズメダイを凌駕していた。
この年だけの一大イベントなのか、それとも来年以降恒例になるのかは神のみぞ知るところながら、忘れがたきこのシーン、ともかくも動画で撮っておいた。
できることなら、来年もまた観たいなぁ…。
そのためにも、オトナたちにはまた春から頑張ってもらわねば。