水納島の魚たち

セボシオニゴチ?

全長 10cm(写真は2cmほど)

 近年はすっかりクラシカルアイになってしまったから、砂底を這いずり回り目を皿のようにして変態的スモールクリーチャーをサーチするダイビングがつらくなってしまった。

 2011年といえばまだまだ目も頭も焦点がピシッとしていた頃で、たまにそんなダイビングもしていた。

 変態的スモールクリーチャーの中には何かを拠り所にしなければ生きていけない依存心の高い(?)ものが多いから、拠り所となりそうな各種付着生物はもちろん、長年海底に鎮座したままになっているロープの切れ端なども重要なチェックポイントだ。

 長年鎮座しているロープには様々な海藻がついており、そこにコノハガニがいたりすることもある。

 そんなロープの切れ端を変態的にサーチしていると、そのすぐ下の砂底に……

 小さなコチの仲間がいた。

 それも、スーパーファインな砂粒と比較して↓このサイズ。

 実測2cmくらいだろう。

 そんなチビチビコチコチが、同じ場所に3匹ほどいた。

 これまでずっといたのに気がつかなかっただけなのか、それともこの時この場かぎりのことだったのか。

 少なくとも後日再訪してみた際には、チビチビコチコチたちの姿は跡形も無くなっていた。

 結局今に至るも(2019年12月)出会いはこの時かぎりで、再会は果たせていない。

 当時は何か小型のコチだろうということで済ませ、以来ずっとそのまま放置していたのだけれど、「砂底の珍客」といいつつコチだらけになってきたこの機会に、わかる範囲で調べてみることにした。 

 シロウト的には重要チェックポイントである、眼の部分を観てみよう。

 チビながらもその眼には、立派なヒダヒダがついている。

 しかしここで注目すべきはヒダヒダよりも、目の上の皮弁(矢印の先)だ。

 全体的なフォルムと模様、そしてこの皮弁(もう一方の眼の上にもある)という特徴から、おそらくこのチビチビコチコチはオニゴチだろうと思われる。

 オトナになってもマックス15cmほど、たいてい10cmくらいの小型のコチである。

 一般的に観られるオニゴチの体色はもっとメリハリがあるけれど、他の様々な魚同様、白い砂底に合わせているカラーリングになるため、白っぽいのはしょうがない。

 はたしてこのチビチビコチコチがホントにオニゴチのチビなのかどうか、例によって確信はまったく無い。

 追記(2022年11月)

 コチのオーソリティである屋我地のS下氏からその後ご教示をいただいた。

 それによると、いずれにせよキチンと同定するにはウロコの数を数えなきゃならないということを踏まえつつ、

 「セボシオニゴチの可能性が最も高い」

 とのこと。

 というわけで、とりあえず「?」マーク付きながらも、このコチは「セボシオニゴチ」ということで。

 ちなみS下氏によると、セボシオニゴチは氏を含む3名で新種記載したものだそうで、その基となる標本の採集場所(タイプロカリティ)は「水納島」なのだそうな。

 なんと、絶好のminnaensisのチャンスだったのだ!

 前オーナー当時に水納島でアルバイトをしていたこともあるS下氏だというのに、なぜそのチャンスを活かさない?

 もっとも、このテの魚の学名に地名がついていたとしても、魚自体が誰の目にもとまらないか…。