全長 25cm
かつての水納島では、よく潜りに行くポイントのボート係留用のブイがついている岩の陰に、いつもオニハタタテダイのペアがいた。
そのため、出会っている個体数は多くはないのに「よく観られるチョウチョウウオ」のひとつにランクインしてもいた。
ところがその後ほどなくしてそのペアは姿を消し、気がつけば水納島におけるオニハタタテダイは、岩場で稀に観られる程度のかなりレアな魚になっていた。
デジイチを使用するようになった2007年以来、オニハタタテダイを撮ったのは、2018年に出会った↑この1匹のみ。
せっかく当たり前のようにいつも同じ場所にペアで居てくれたにもかかわらず、撮っておくべきときに撮っておかなかったから、フィルムで撮っていた頃に105mmレンズで無理矢理撮った、冒頭の写真しか残っていない。
普通種だからと放っておくと、気がついた頃には滅多に出会えない魚になっているかもしれない。
ツノダシが絶滅危惧種になってから、「撮っておけばよかった…」と嘆いても始まらない。
どんな魚であれ、出会いはあだやおろそかにしてはいけないのである。
※追記(2022年12月)
この冬(2022年12月)長期に渡ったボートの修理がようやく終わり、相次ぐ時化の隙を見つけては潜っていたときのこと。
半月で水温が3度も下がっていたというのにエントリー直後に水の冷たさを感じなかったのは、エントリー早々にまさかのオニハタタテダイに遭遇したから。
2018年以来の再会である。
もちろんチャンスを逃さずパシャ。
でっかいから行動範囲も広いらしく、リーフに沿って泳いでいるところをついていったところ、サンゴの陰で休憩していたチョウチョウウオに激しく追い立てられて反転したオニハタタテダイ。
オニハタタテダイにしてみれば、「散歩していただけなのに…」ってところだろうけど、どの魚にも「地雷」はあり、ましてや同じチョウチョウウオの仲間となれば、スイッチはたやすく入ってしまうのだ。
チョウチョウウオに追い立てられ、ホーホーのテイで逃げてきたロンリー・オニハタタテダイの頭の上に、「!」マークが灯った。
ひょっとして仲間?
と思いきや、それは…
ミナミハタタテダイなのだった。
ま、近い仲間ではあるけれど…。
心優しいミナミハタタテダイだからチョウチョウウオほどではなかったものの、やはりスイッチは入るから、オニハタタテダイを牽制し…
…それ以上の接近を許さなかった。
このミナミハタタテダイのカップルは、ペアの片割れの背ビレがちょっぴり傷んでいるのが目印になることもあって、過去写真を見ればこの場所に少なくとも昨年の師走からいるペアであることがわかる。
安住の地であれば、ミナミハタタテダイは持ち場(?)を離れることはないのだ。
かつてペアが同じ場所に居続けてくれたことがあるように、このロンリー・オニハタタテダイもパートナーと出会い、そこを安住の地と決めてくれれば、リーフ沿いに徘徊することもないのかもしれない。
それから1週間ほどのち、異なるポイントで潜っていたら、再びロンリー・オニハタタテダイに遭遇した。
もともとの個体数の少なさからしてもう1匹いるとは考えづらいし、体後半の黒い模様の滲み加減や尻ビレの縁の黒いラインの乱れ加減を見ても、ほぼ間違いなく前回会った子と同一個体と思われる。
水平距離にして100メートルは離れているところで、相変わらず徘徊しているロンリー・オニハタタテダイなのだった。