水納島の魚たち

オオモンハゼ

全長 5cm

 過去に撮った写真の整理をしていたところ、「ん?」となるハゼが写っていた。

 軽石騒ぎでえらいことになっていた、2021年の11月にビーチで撮ったものだ。

 シルト濁りのために白内障のような視界になることが多いビーチや桟橋脇では、ストロボを光らせると水中の微粒子がディヒューザーのような役目を果たしてしまい、全体的に白くオーバーに写りがちで、「ん?」となった画像もほとんどオーバー状態の↓こんな状態だった。

 なんでこんな失敗作をあえてキープしておいたんだろう?

 それが最初の「ん?」だったんだけど、画像をよくよく見てみると、既知のどれでもないハゼではないか。

 なるほど、だから失敗写真でもキープしてあったのか。

 当時はそのまま正体を探ることなく「地味なハゼ」認定のままお蔵入りしていたようなので、この日「ん?」となったのもきっと何かのお告げ、さっそく正体を調べてみた。

 名著「新版日本のハゼ」を見てみたところ、どうやらこれはオオモンハゼっぽい。

 図鑑の写真と見比べただけではにわかには信じがたいけれど、同じ種類のハゼでも、白い砂底に住まうものと黒っぽい砂泥底に棲むものでは体色がかなり違う、という例はハゼには特に多い。

 昔に比べればシルト成分が激増しているビーチではあっても、色味としては白っぽいので、オオモンハゼも水納島ではこういう色をしているのだろう。

 ちなみに冒頭の写真は、コントラストや色味がハッキリするように画像処理したものです。

 3年前のことながら撮ったのも目にしたのも初めてのことで、なおかつ今になってようやく存在を認知したオオモンハゼ。

 砂底のポイントであれば各根の周りなどでイヤというほど観ることができるカタボシオオモンハゼとは違い、オオモンハゼはかなり浅いところが好きなのかもしれない。

 カタボシオオモンハゼ同様、眼のあたりにラインがあるほか、これといって特徴がないオオモンハゼ、やっぱり地味地味ジミーだ。

 でもよく見てみると、口元はなにげに特徴的な形状をしている。

 なんだかナンヨウブダイの口元の左右に1対ある突起のような存在感。

 なるほど、なにげにこんなところでシブく小技を利かせていたのかオオモンハゼ。

 …と思いきや

 実はカタボシオオモンハゼにも同じような突起があるじゃん…。

 どうやらこの口角の突起状のものは、オオモンハゼグループの特徴らしい。

 やはりこれといった特徴はないのだろうか、オオモンハゼ。

 いわゆるひとつの、「これといった特徴がないのが大きな特徴」というヤツだったか…。

 「ん?」となるのに3年かかったのも無理はない?