全長 8cm
まだみんなフィルムで水中写真を撮っていた頃から、ピンクダートゴビーという英名が一部変態社会人たちの間でお馴染みになっていたこのハゼ(クロユリハゼの仲間は総じてダートゴビーと呼ばれる)。
それが2017年になってついに新種として記載され、同時に和名もつけられた。
その名もカグヤヒメハゼ。
ウミウシにシンデレラがいるならば、ハゼは和風にかぐや姫。
いいじゃないか、いいじゃないか。
お馴染みとはいえ基本的に深場にいるハゼだから、変態社会にお住まいではない健全ダイバーにとっては馴染みでも何でもないハゼのはず。
でもほんのり淡いピンク色の可愛い姿は、一度は目にしてみたくなるかもしれない。
が。
ストロボを当てればこうして可愛いピンク色を楽しめるけれど、深場にいる彼らを肉眼で見れば、実際の色など想像できないほどの地味に薄い青色でしかない。
じゃあライトで照らせばいいじゃん!
そんなことをすれば、たちまち彼らはピューッと逃げ去ってしまうことだろう。
そう、彼らは穴に逃げ込んでしまわず、遠くへ遠くへと去っていくのだ。
しかもすこぶるつきで警戒心が強い。
たとえ近づけたとしても……
許される時間内でどれほど粘っても、スジクロユリハゼとは違い、一度としてヒレを広げてはくれなかった。
ひょっとしてこのハゼ、ヒレを広げられないんじゃ??
……そんなはずはなく、ネット上にはフィールドで撮られたヒレ全開の写真もわずかながら見られるし、名著「日本のハゼ」でももちろんヒレは開いている。
これがまた綺麗なんだわ。
なにがどうしたらヒレを広げてくれるんだろう??
それを探るために足繁く通うには、水納島の場合遠くて深いんだよなぁ……。