全長 5cm
初めて沖縄の海に入って、初めて水中マスクを付け、初めて海面下をのぞいたとき、目の前のそこかしこで輝くコバルトブルーの美しさをみんな覚えているだろうか。
夢にまで見た熱帯の海が、眼前にあるヨロコビ……。
多くの方にとってルリスズメダイは、熱帯の海の玄関でやさしく手招きしてくれていた魚だ。
そんな最も印象深かったはずのこのコバルトブルーなのに、スクーバダイビングに高じるようになるにつれて縁が薄くなっていく魚でもある。
リーフの内側のごくごく浅いところに住んでいるため、通常のボートダイビングでは出会う機会がまったくないのだ。
むしろ海水浴客にとってお馴染みの魚といえる。
桟橋の上からでも観ることができるほどで、そのような場所にはルリスズメダイのチビチビが数匹集まっていることもある。
瑠璃色の見え方が親よりも若干薄目で、背ビレの付け根後縁に点々が観られる。
巨匠コスゲさんのように、日がな1日ビーチ内を潜り倒しでもしないかぎり、こうしてじっくりとルリスズメダイのチビターレを観る機会は滅多にないから、ある意味貴重だ。
リーフの中の浅く明るい海中で仲良く群れ泳いでいるように見えるこのルリスズメダイ、群れといってもキホシスズメダイのように一致団結した統率のとれたものではなく、多数がひとところに集まりながらも、めいめいが気ままに暮らしている、という雰囲気だ。
なのでルリスズメダイたちがみんな同じ方向を向いて集合している、という写真は、ありそでなさそなレアケースだったりする。
このように集まっているとみんな仲良さげに見えるけれど、テキトーに集まっているように見えつつ、実際はオス1匹が10匹弱のメスをかかえるハーレム社会だそうで、ハーレムごとに適度に距離をとって暮らしているから平和が保たれているらしい。
なので、美しいからといって狭い水槽にやみくもにたくさん入れてしまうと、雄同士が激しくケンカをするほど縄張り意識は強いようだ。
みんな同じように見えるルリスズメダイながら、オスは群れの中ではひときわ大きく、しっぽの先まで青い。
それに対したくさんいるメスは、しっぽの先が透明だから区別するのは簡単だ。
また、沖縄よりも南の海域で観られるルリスズメダイは尾ビレの先がオレンジ色になっていたりするので、知ってさえいれば海域ごとの色彩の変異も楽しめる魚である。