全長 20cm(写真は10cmほど)
やや内湾性である本種は、リーフの外ではまず見られない。
そのかわりリーフ内に多く、水納島ではビーチ内の水深1mにも満たないような浅いところで、ごくごく普通に見られる。
……いや、それはひょっとすると、今となっては過去形かもしれない。
少なくともかつてはフツーに観られた。
なので海水浴をしている時でも、水中メガネさえあれば誰でも見られる魚だ(った)。
砂地に転がる岩や石の下に巣穴を作り、その周りをペアで行動する、という姿はオトメハゼ同様だ。
そして彼らもやはり、いつも砂地に顔をつっこんで大量の砂を口の中に入れては……
不必要な砂粒をエラからバラバラと出す。
そうやって餌をとるときにかわりばんこになるのも、他のクロイトハゼ属の魚同様だ。
かわりばんこなのは、両者が同じタイミングで砂底に顔を突っ込んでいたら、その間の周囲への警戒がおろそかになるからだろうか。
スキンダイビングのバディが同時にジャックナイフをしてはいけない、というのと少し似ているかも。
海水浴エリアでもフツーに観られたころは、20cmくらいにまで育ったものもゴロゴロしていたから、サザナハゼを観るのに苦労はいらなかったのに、昔日の面影がすっかりなくなってしまったビーチでは、サザナミハゼがそこかしこに…というわけにはいかなくなっている。
ではいったいどこで彼らと会えばいいのだろう?
裏浜だ。
水納島の裏浜は、本島由来の泥成分が年々溜まり続けた結果、潮が引くと泥質の干潟になる。
でももう少し沖に行くと、海底にきれいなリップルマークを作るくらいに砂成分が増えて来る。
そこはタカノハハゼなど内湾性の共生ハゼがいたりする意外性の男ヤマクラのような場所で、サザナミハゼの若いペアの姿も観ることができた。
浅いものだから風で揺らめく水面を通った日差しが、白い砂の上でキラキラキラキラ、ダンシングレインボー状態。
まるでサザナミハゼを祝福しているようにすら見えた。
そんなムードに乗っちゃったのか……
唐突にチュー。
潮が引いている時だったから水深は50cmほどで、一応タンクを背負って潜ってはいるものの、カメラを構えている間、ワタシの頭とタンクの一部は海面上に出ていた。
これが真夏なら裏浜まで散歩してくる観光客のみなさんに驚かれたかもしれない。
しかし1月の半ばともなれば、島を訪れる人などいるはずもなし。
おかげで真冬の恋模様を、こっそり覗き見ることができたのだった。
※追記(2023年1月)
ここ1〜2年はリーフ内で潜る機会が増え、特にビーチエリアではごくごくフツーにサザナミハゼと会えることが判明した。
減った減ったと騒いでいたのは、一時的なことだったのか、それとも気のせいだったのか…。
また港の工事が始まったら、激減するかもしれないけれど。