全長 40cm
ニザダイの仲間を紹介するにあたり、たとえ地味でもスルーしないようにしよう!などとエラそうなことを言っているワタシ.。
ではあるけれど、実のところを申しますと、こうして注目でもしないかぎり、ハギ類といえばどうしても外角低めのボールゾーンからボールゾーンへと外れていくスライダーのようなもの。
手が出ないのではなく、手を出さない明らかなボールだ。
普段は。
なので、そうやって見逃したボールがコースこそボールでも、実は二度と見られないかもしれない水原勇気のドリームボールだった、なんてことも多々あったかもしれない。
ニザダイ類に執心していたこのオフ(2019年)、砂地のポイントのリーフ際でサザナミハギを目にしたときは、
まさか!
と驚いたものだった。
サザナミトサカハギって、ドロップオフ環境のような、もっと潮通しのいいところに群れているイメージだったのだ。
そういえばその昔、某有名海洋写真家が水納島で撮ったサザナミトサカハギが印刷物になっていたような記憶があるようなないような……。
とにかくそういった系の資料は、2011年の台風ですべて被災してしまって廃棄処分を余儀なくされたものだから、その後記憶の再生をする手段が全くない。
なのでこの時こそ「初」と信じ、そうかぁ、水納島にもいたのかサザナミハギ…とあらためて感慨深げに観ていると、件のサザナミトサカハギはやおら興奮モードになり、もう1匹のサザナミトサカハギを相手に強気のアピール。
どっちも同じサザナミトサカハギなのに、色味がまったく異なるでしょ?
右側が興奮モードになっているヒト。
どうやらオスの婚姻色らしい。
ということは、左の子がメスってことか。
とにかくオスの体色の変化はあっという間で、海の中では青いラインがもっと蛍光色に輝いて見え、なんだかとってもカッコよく見えた。
咄嗟のことだったので大助・花子の大助のように「アワワワワ……」となりながらコンデジで撮っているため、そのカッコよさの半分も表せないのがもどかしい……。
興奮色になったオスはまだ興奮冷めやらぬのか、相手がその場を去ってもまだ鼻息荒い状態だった。
盛り上がるとブルーラインが目立つサザナミトサカハギも、落ち着いている時は↓こういう色をしている。
もっとも、やはりニザダイの仲間なので体色の濃淡を変えるのは自在で、冒頭の写真のような色味になっていることもあるから、いったいどれが「普段」の姿なのかは不明ながら、遠目には無地に見える体には、細かい胡麻斑模様が散りばめられている。
また、盛り上がって激しく泳ぐこともあるわりには、その顔はけっこう優しげだ。
顔つきを見ると、クロモンツキとは違って、その口は違和感のないところにある。
でもこのサザナミトサカハギは、シルエットに違和感が。
なんだか超高速で泳いでいたら壁にぶつかったかのように、吻端がひしゃげたようなフォルム。
見方を変えれば、テングになろうとしてなれなかった鼻、のような……。
さらに成長すると、この「鼻」の部分はさらに盛り上がるらしく、まさにユニコーンになり切れなかったフォルムになるようだ(オトナになると体長は50cmを超えるという)。
いずれにしてもそのフォルムは独特なので見誤ろうはずはないし、いたらまず気がつくだろうから、これまで観た記憶がないってことは、これまで水納島で会ったことはなかったに違いない。
2019年3月下旬の初遭遇以来、同じポイントでその後何度か出会っているサザナミトサカハギ。
今回この稿を書くにあたり、念のために過去の写真も見ていると……
なんと、その年の1月に、なんのてらいもなく冒頭の写真を撮っていたのだった。
撮ってるくせにまったく気がついてないじゃんッ!!>オレ。
いったい何だと思って撮ってたんだろう??
明日へ向かってはばたく水原勇気のドリームボールは、それとまったく気づけないうちに投じられていたのだった。
ちなみに1月に撮っていたのも同じポイントで、現在のところ水納島ではその場所でしか観ていない。
やっぱりレアなんですよね?水納島では。
※追記(2021年9月)
その後、水納島のリーフ際でなら、場所を問わずちょくちょく出会えることがわかってきたサザナミトサカハギ。
けっして多くはないにしろ、「レア」ってほどではないようだ。
しかも意外な…というか、まったく気にかけていなかった若い頃のフォルムは、オトナとは違って……
吻端がひしゃげた形ではなく、他のテングハギの仲間と同じように丸っこいではないか。
これを遠めに見れば、テングハギモドキの若魚と思ってしまっていたに違いなく、やはりこれまでずっと見逃し続けていたのだろうなぁ、ドリームボール。
※追記(2022年10月)
前年から続いていた軽石禍のせいで、今年(2022年)は春先まで長い間ボートを渡久地港に上架したままになっていた。
そのため海況&お天気が良くても、いつものオフシーズンのように気軽にボートダイビングができなかったので、そういう日にはビーチエントリーで普段なかなか探訪できないリーフ内を巡ってみたりした。
そして水深1mほどのサンゴ群落で出会ったのが、こちら。
5cmほどだからチビターレというには薹が立ちすぎているものの、人生最小級のチビチビサザナミトサカハギだ。
これより2周りほど小さい子が、5cmほどの先輩につかず離れず泳いでいた。
ものの30秒ほどで、最小記録更新だ。
リーフ際にいるオトナを観ていると、体色の濃淡を自在に変えることができるようながら、この時のチビたちは大きいほうはずっと淡いままで、小さいほうはずっと濃いままだった。
同じ時に、人生初遭遇となるブチアイゴのチビにも会っており、両者が一緒に泳いでいることも多かった。
リーフ内の浅いサンゴ群落の腰掛居住者同士、なにげに気が合うのかもしれない。
※追記(2023年1月)
この年(2022年)は秋にも諸事情あってボートを長らく上架し続けていたため、リーフ内で潜る機会が多かった。
おかげで…
サザナミトサカハギの人生最小記録更新♪
2cmほどの激チビで、最初は誰だかわからなかったのだけど、すぐ近くにもう1匹いたチビがひと回りほど大きく、サザナミトサカハギのチビの特徴を出していたおかげで判明。
↑こちらは3cmほど。
2匹がすぐ近くにいてくれたおかげで、サザナミトサカハギの激チビターレ時代には体の点々模様は無く、3cmくらいになってようやく発現してくる…ということがその場でわかったのだった。