全長 30cm
写真だけ見ると、おとなしく海底にジッとしていそうに見えるこのセミホウボウ。
けれど実際はけっこう活発な魚で、見かけによらず素早く動き、すぐに背(?)を向ける。
そのためなかなかそのご尊顔を拝し奉ることができないのだけれど、一瞬立ち止まってくれた。
ケロッ子デメタンのようなこんなつぶらな瞳で見つめられると、どうも気恥ずかしくなってしまっていけない。
彼女も照れているのか、ポッと頬を紅潮させた。
それなのに、もう少しお近づきになろうとしただけで、彼女はキャッと言わんばかりにデビルウィングを広げ、つれなくサーッと立ち去ってしまった。
セミホウボウと初めて会ったのは、学生時代にウミホタルの夜間採集に付き合って訪れた、伊計島の小さな港でのことだった。
当時は本島西海岸や南部のビーチエントリーポイントでダイビングするのが通例で(当時は週末の真栄田岬でさえ混雑することは無かった…)、そういう場所ではセミホウボウになんて会ったことがなかったから、新鮮な感動を覚えた記憶がある。
きっとセミホウボウは、内湾域の水が淀むようなところで見られる魚なのだろう…
そう解釈した。
なのにどういうわけか、ひところの水納島では、砂地のポイントでセミホウボウがポツポツ見られたことがあった(90年代後半)。
それまで観られなかったセミホウボウと出会えるようになってうれしい反面、内湾性の魚が観られるようになるってことは…
…と、やや不安がよぎったのは言うまでもない。
ところがその後、少なくとも今世紀になってからは、セミホウボウとはただの1度も出会ってはいない。
環境悪化の指標というわけじゃなくてホッとしたのはいいけれど、出会えないとなるとなんだか寂しいセミホウボウ。
近年とみに増加中の、変態的クリーチャーを求めて砂泥底の海を潜る本島変態社会ダイバーのみなさんは、セミホウボウと出会う機会が多いのだろうか。
ところで、当時はセミホウボウかホウボウか、と大別できればOKだったのに、いつの間にやら(昔から?)セミホウボウにはお仲間が増えていて、本家セミホウボウのほかに、
と、本家も含め、5人揃ってゴレンジャー状態になっているらしい。
で、ここで紹介しているのはホントに本家本元、ザ・セミホウボウ…
…かどうかは、もちろんのことまったくわからないのだった。