全長 2m(写真は6cmほどの幼魚)
2014年5月のこと、5月も末だというのに北寄りの肌寒い風が吹いていた日の桟橋脇に、小枝にそっと寄り添う謎の魚の姿が見えた。
桟橋上からでは正体不明だったので、連絡船の朝イチ便でお越しになる日帰りのゲストを待つ間、正体を解き明かすべく水の中に入ってみた。
これじゃあ正体もへったくれもないので、対人比を兼ねて近づかせてもらった。
なんだこの得体の知れなさ度99パーセントの魚は!?
…と、ワタシの体内のアドレナリンは途端に沸騰10秒前に達したのだけれど。
写真をひと目見たオタマサいわく
「シイラの幼魚じゃないの?」
実は。
ずいぶん昔、おそらくは前世紀に、これとほぼ同サイズのチビを同じく桟橋脇で見つけたことがある。
たしか当時は瀬能さんを頼ってその正体をつきとめたところ、まったく予想外、まさかのシイラの幼魚ということが判明してたいそう驚いたことがあったのだ。
しかしなにぶん写真記録ひとつ残っていない話だから、15年も経てばそんなエピソードなどすっかり忘却の彼方に流れ去るもの。
ところが3日前のことはたちどころに忘れても、10年前に日帰りで1度だけお越しになったゲストのことを覚えている異常記憶体質のオタマサは、このチビターレがシイラの幼魚であることをあっという間に思い出していたのだった。
というわけで、過去に2度会っていることになるシイラのチビターレ。
でも外洋性のオトナはさすがに水納島近辺じゃ会えない……
…というわけでもない。
これまた随分昔のことながら、防波堤の裏あたりのリーフ際にボートを停めていた時のこと、突然ボートの周りの海面がバシャバシャと沸き立つように騒がしくなり、時々飛沫の合間から金色に輝く大きな魚体がいくつも見えた。
すぐさま水面越しに眼下を見やると、その緑〜金色の魚体が群れを成して狂乱状態になっているではないか。
ここは突撃!!
とばかりにすぐさまボートから飛び込んでみれば……
なんと目の前にシイラの大群!!
水面付近で大狂乱パーティーでもしているかのようだった。
ワタシの闖入に驚いたシイラたちは、狂乱を終え、潮が引くように沖へと泳ぎ去っていった。
いやあ、カッコイイ、シイラ!!
残念ながら画像記録は無いものの、こればかりは大脳辺縁系の海馬の奥深く深くに記録されている。
ま、そのうち取り出せなくなるかもしれないけど。
リーフ際で群れることもあるくらいだから、沖には彼らが群れ成している季節もある。
島の太公望のひとりリョウセイさんは、シーズンオフともなると本島から島にご自身のボートで戻って来る際などに、のんびりトローリングをしながら、ということもある。
で、シイラが旬を迎える11月、その日も時間があったからのんびりトローリングをしながら島に帰ってきたリョウセイさんは……
見事マンビカー(シイラ)を2匹もゲット!
最大2mにもなるというシイラからすれば小ぶりながら、刺身にしてもフライにしてもまだまだ食べ切れないほどとなれば、マンモスをゲットしたギャートルズの父ちゃんなみに誇らしげになるのも無理はない。
高級大物嗜好の釣り人からは外道扱いされるシイラながら、ハワイではマヒマヒと呼ばれ高級魚として広く愛されているし、沖縄ではとくに北部地方で重要な水産資源になっている。
毎年秋頃になると漁港のフェンスにズラリとシイラが天日干しされている光景を観ることができる本島北部の国頭村では、毎年11月後半に「フーヌイユー(シイラのこと)祭り」が開催されてもいる。
沖縄の海は、シイラが群れ泳ぐ海でもあるのだ。
もう一度だけ、できればワイドレンズを装備しているときに、シイラの巨群がリーフ際に来てくれないかなぁ……。
…っと、その前に、まずはトローリングで1匹ゲットを目指そうっと。