水納島の魚たち

シノビハゼ

全長 6cm

 浅い海で観られる白っぽい体に点々がある共生ハゼは、すべてヒメシノビハゼだ…と思いこんでいたところ、リーフの外、リーフ際のごくごく浅いところにいる似たようなハゼは、ヒメシノビハゼとは別の本家シノビハゼだった。

 体に散りばめられた点々模様に黄色も含まれることや、その点々がお腹側にまであることで、ヒメシノビハゼと区別することができる。

 もっとも水納島の場合、ボートダイビング中にヒメシノビハゼを目にすることはまずないから、目を皿のようにして違いを見分ける必要はないかも。

 ハタタテシノビハゼと同じように、リーフ際のリーフと礫底の境界付近を巡れば、けっこうな数のシノビハゼに会うことができる。

 彼らがパートナーにしているエビちゃんは、そのような環境に住む数多のハゼたちに大人気のコシジロテッポウエビだ…

 …と思っていたのだけど、このエビ、よく見ると腰の白帯模様は似ているけど、コシジロテッポウエビじゃない。

 誰だこれ?

 その4日前に撮ったシノビハゼが一緒に暮らしているエビも、これまた見知らぬエビっぽい。

 パートナーがすぐには誰だかわからないナゾのエビだなんて、意外にミステリアスなシノビハゼ。

 同じような環境に暮らす共生ハゼの種類は多く、光を当てればそのどれもが、シノビハゼに比べれば相当派手。

 となると、なにもわざわざそれらのなかからシノビハゼをあえて選び、じっくり時間をかけて観てみよう…なんていうダイバーがそうそういるはずもない。

 おかげでシノビハゼは、ごくごくフツーに暮らしているにもかかわらず、その名のとおり人目を忍んでいるかのごとく、静かに日々を過ごしているのであった。