全長 35cm
シーズン中のシロブチハタは、オトナよりもチビターレのほうが出会う機会が多い。
初夏ごろから、砂底のなんてことのない小岩を拠り所にしているシロブチハタの幼魚が目立ちはじめるからだ。
ハタとは思えぬその姿がとっても可愛いので、ゲストにご覧いただく機会は多い。
ただしチビターレの頃はビビリだから、気安く近寄るとすぐに物陰に隠れてしまう。
ウミシダに寄り添っているときでも、コワゴワと物陰から覗き見るようにこちらの様子を伺うチビターレ。
夏場になると、ミニマムサイズからやや成長したチビに出会う頻度が増す。
そのため、シロブチハタといえば幼魚、というイメージをお持ちの方もいらっしゃることだろう。
上のようなミニマムチビターレから少し成長すると、早くもその場のボス気取りになっている子もいて、スズメダイたちが逃げ惑う中、雄々しくカメラを睨みつけてくることもある。
ボス気取りではあっても、このころはまだまだ可愛い。
しかしこのあとは、成長するにつれて地味になっていく。
もう少し成長すると……
なんだかくすんできたような…。。
そしてオトナになると……
…地味。
海中で観ると地味度はさらにアップするので、あまり人々の目には留まらない。
もっとも、その体色と可愛さ度の落差が面白いから、それ以前にチビターレをご覧いただいているゲストには、あえてこの地味な姿をご覧いただくこともある。
シロブチハタのオトナは一つの根に居ついているわけではないのか、好きなように広範囲をウロチョロしているように見え、根の近くでもなんでもない海底でダラリとしていることもよくある。
シロブチハタの幼魚の多くは、少し成長したらとても住み続けられないような小岩を拠り所にしているため、チビがすべて無事にオトナになっているとは思えない。
でも条件が整っている場所に住み着いたチビの場合は、そこで成長していく様子が観られることもある。
かつて新一本サンゴと隣接する岩に住み始めたチビターレは、そこで若魚にまで成長し、いつの間にか新一本サンゴの門番のようになっていた。
本人も門番としての自覚があるのか、近寄ってくるダイバーを闖入者認定し、新一本サンゴにすんなり近づけさせてはくれなかった。
新一本サンゴを撮ろうとしても、カメラの前にドドンと立ちはだかるのだ。
サンゴが見えないんですけど…。
こうなると、もはやチビターレの頃のビビリな面影は微塵もない。
なので、彼がクリーニングをしてもらっているときも、人前で大口を開けて余裕綽々だ。
シロブチハタが根に居つかないのは、たいていの根にはすでに先住のゴッドファーザーがいることが多いからなのか、他にボス系ハタ類が誰もいない小さな根では、その場のボスになっていたこともあった。
彼はここで一家を成していて、ときには伴侶とともに悠々と根をパトロールしていることもあった。
他の住民ともうまくいっているようで、クマドリまでがボスとのツーショットに応じてくれる。
先述のとおりシロブチハタは他に何もないところでポツンといる姿を目にすることが多いものだから、てっきり放浪生活が好きなハタなのだとばかり思っていた。
けれどこうして観てみると、ホントのところの彼は、ホームスイートホームがある安定した生活を求めているのかもしれない。
※追記(2023年1月)
シロブチハタのチビターレは毎年安定的に多数観られるからすっかりお馴染みになっていたのだけれど、昨年(2022年)まさかの最小記録更新となった。
砂底からポツンと生えているトサカの根元にいた2cmほどのチビターレは、ようやく「シロブチ」になりかけのかよわげな半透明だった。