水納島の魚たち

シロダイ

全長 30cm

 その昔那覇の居酒屋で刺身3点盛りなんぞを頼んでみたところ、3種のうちひとつだけ種類がわからない白身の魚が含まれていた。

 刺し盛りの皿を持ってきてくれたおねーちゃんに、この白身の魚はなんですか?と尋ねたところ、わざわざおねーちゃんは厨房に訊きに行ってくれて、ニコニコと笑みを湛えつつ、

 「シルイユーです♪」

 と教えてくれた。

 シルとはすなわち白のこと、そしてイユとかイユーはウオ、すなわち魚のこと。

 いや、これが白身の魚ってことはわかってるんですけど、魚の個別ネームはなんていうのですか?

 と尋ねたワタシにおねーちゃんは困ってしまった。

 (おそらくおねーちゃんも)当時まったく知らなかったことながら、シルイユーとは白身の魚という意味ではもちろんなく、この魚の沖縄方言名だったのだ。

 おねーちゃんはちゃんと質問に応えてくれていたのにもかかわらず、ワタシが無知なるがゆえに困らせてしまってごめんなさい…。

 後日調べてみたところ、沖縄方言名でシルイユーこと白魚と呼ばれるこの魚は、その名もシロダイという。

 和名もまったくそのままだったことに驚きつつも、居酒屋でやけに美味かったこのシルイユー、水納島でもフツーにいる。

 それまで個人的に脇役中の脇役でしかなかった魚が、ひとたび「美味い!」という実力を知るや、たちまち注目してしまうわかりやすいワタシ。

 さてこのシロダイ、他のフエフキダイの仲間と同じく、白い砂底にいるときは体色を淡くしているため、シロダイの場合はその名のとおりほぼ真っ白。

 それが根の近くにくると、やはり体色を濃く変える。

 でも過去に撮った写真を見てみたら、砂底の上でも体色を濃くしているものがいた。

 いずれにしても、この色の状態のときに彼らを観ても、「シルイユー」とは思わないだろうなぁ。

 彼らの餌場は砂底なので、砂底を漁るときは白い体だ。

 砂中の小動物を漁る魚たちの例に漏れず、砂ごとボイッと口の中に入れては、エラから砂だけワーッと吐き出す。

 そういうある意味大雑把な食事をしている以上、普段のケアは欠かせない。

 おや?

 シロダイはクリーニング中も白っぽいままなのだろうか。

 と思ったら、やがて……

 濃くなってきた。

 おまけに、ホンソメケアの刺激で催してしまったのか、ポロリとウンチまでしている。

 クリーニングケア中にウンコまでされるホンソメワケベラの立場っていったい……。

 けっして群れ集うほどいるわけではないけれど、砂地のポイントならたいてい出会うことができるシロダイ。

 たいていのダイバーにとって脇役でしかない彼らながら、ひとたびその美味さを知れば、観る目が変わること請け合いだ。