全長 15cm
タキゲンロクダイは、ドロップオフの壁沿いの、わりと深めのところなどでチラホラ見られる魚だ。
なので、お向かいの伊江島に行けばいつでも見られるチョウチョウウオなのだろうけれど、ご存じのように水納島にはそのようなポイントがないため、この魚を見ることはきわめて稀だ。
ところが、何を血迷ったのか、水納島の岩場をウロウロしているタキゲンロクダイに出会ったことがある。
砂地ではない分少々暗めの海中で、このタキゲンロクダイの渋い体色がよく映えていた。
残念ながら、以後はせいぜい中の瀬で目にしたことがあるくらいで、デジイチ装備になってからおそらく1度しか出会ったことがない。
それが上の写真。
まだ眼状斑の名残りがある若い個体を見つけたものの、フィッシュアイレンズ装備だったため、とりあえず…的に適当に撮っておいたものながら、その後現在に至るまでもうかれこれ10年以上は出会っていないのだから、今となっては貴重な記録だ。
…と思っていたところ、過去写真を振り返ってみたところ、その1年後にまた出会っていた。
ワイドレンズで撮ったデジイチ写真群から発見。
眼状斑が完全に消えているオトナだ。
前年と同じ場所で潜っているので、ひょっとすると眼状斑の名残りがあった子のその後の姿かも。
それよりも、トサヤッコとのツーショットなんて、この先2度と撮れないな……。
そのほか超ピンボケながらタキゲンロクダイのペアが小さく写っているものがあった。
2008年当時は、まだタキゲンロクダイと会えていたのだ。
その20年前の学生の頃の我々にとっては、ダイビングといえばビーチエントリーだった(当時はそんなハイカラな言い方はせず、陸エンと言っていたが)。
今をときめく沖縄本島の著名なダイビングスポットのほとんどは、我々の先輩方が設定していったと言っても過言ではないくらいだから、我々の学生時分にはすでに断崖絶壁のように見えるところでもちゃんと降りていくルートが確保されていて、重いタンクを担いでエッチラオッチラ波打ち際まで行けた。
そんな崖を降りていくポイントというのは海中も崖で、いわゆるドロップオフのポイントである。
現在に比べれば遙かに透明度のいい海の中には、様々な魚がたくさんいたに違いない。
いたに違いない、というのは何を隠そう、学生時代のダイビングというのは今のように細やかな魚などにはまったく興味がなく、じゃあいったい何を楽しんでいたのかと問われてもうまく説明できない、というような不思議なダイビングをしていたのだ。
そんな我々ですら、このタキゲンロクダイの渋い美しさには見惚れていた。
今日は何匹見た、昨日はどうだった、とかいう具合に。
さして派手ではないこの魚を美しいと感じていたくらいだから、けっこう通だったのかもしれない……(?)
※追記(2022年10月)
今年(2022年)8月に、久しぶりにタキゲンロクダイと再会した。
水深25mほどのところを広範囲に縄張りにしているようながら、パートナーの姿はどこにも見当たらず、1人寂しく行動していた。
彼ら自身がお相手を見つけられないくらいだもの、我々がなかなか会えないのも無理はないか…。