全長 40cm(写真は4cmほどの幼魚)
それまで一度も観たことがなかったのに、どういうわけかその年に限って立て続けに何個体も目にする、ということがたまにある。
このタテスジハタのチビもそのひとつだ。
タテスジハタのオトナは潮通しのいい深いところを好むようで、水納島周辺の場合、岩場のポイントの深いところにある崖の上などに行くと、ごくたまに会うこともある。
出会うこと自体が珍しいからその都度お近づきになろうとはするのだけれど、けっこう警戒心は強く、容易に近寄らせてはくれない。
近寄らせてはくれないまでも、何度か出会ったことがあるオトナや若魚に対し、ウワサに聞くビューティホーな幼魚は写真でしか観たことがなかった。
オトナと出会える機会の少なさに鑑みれば、その幼魚との出会いのチャンスはほぼ期待できないに違いない。
ところが、2016年の初夏のこと。
砂地のポイントのとある根に、目を疑うばかりに美しいタテスジハタのチビターレの姿が!!
そのサイズといい色合いといい、知らなければ新種のハナダイ類と思ってしまうかもしれない。
実際、ハナダイ類をはじめとする小魚たちに混じって一緒に泳いでいる(フリをしている?)。
しかしそこはやっぱり小さくともハタ。
油断してアクビをすると、その正体がいっぺんにバレてしまう。
でっかい口!!
それまでの21年間で初めてとなるタテスジハタ・チビターレとの遭遇の興奮も冷めやらぬ数日後、今度はまったく別の砂地のポイントで、色合いの異なるチビターレがいた。
ほぼ同サイズながら、鮮やか度合いは控えめなチビターレ。
他にももう1匹、これまたまったく別の場所でこのタイプのチビターレに出会った。
それまで一度も観たことがなかったのに、立て続けに3個体も。
この年(2016年)にはその後、これまた初遭遇のツチホゼリ・チビターレにも会えている。
なにかがどうにかしてうまい具合いになって、彼らハタ類のチビターレが水納島にたどり着いてくれたのだろうか。
タテスジハタ・チビターレはうまく成長してくれたのか、翌春にはそれなりに大きくなった姿を見せてくれた。
20cmほどとまだ若さを残しながらも、その佇まいや泳ぎっぷりは、すっかりハタらしくなっている。
行動範囲は広くなって、居場所はリーフ際に変わっていたから同一個体かどうかは不明ながら、同一個体じゃないとすると、他にもチビターレがいたってことになる。
2016年はタテスジハタ・チビターレ祭りだったのか??
このあと5月の末までリーフ際のほぼ同じ場所にいてくれたタテスジハタヤングは、その後プッツリ消息を絶ってしまった。
どこか過ごしやすい潮通しのいい場所で、のんびり暮らしているのだろう。
ちなみにタテスジハタは、このまま成長するとやがてこうなる。
これで40cmくらい。
この姿を観て、これがビューティホー・チビターレのオトナの姿だなんていきなり言われても、とてもじゃないけどにわかには信じがたい。
でもあらためて若魚の写真を観てみると、顔のあたりのタテ筋や、尾ビレ付け根の黒点、それに体側の縞々といったオトナ模様が、ジンワリと現れ始めていることに気づくのだった。
たしかにオトナと子供なんですね……。