全長 40cm
テングハギはその特異な形態ゆえに各地に方言名があるようながら、沖縄本島地方ではもっぱら「ちぬまん」と呼ばれている。
知らぬ人とてないほどに有名な魚で、その名を屋号にしている居酒屋もあるほどだ。
味には多少のクセはあり、足も早い魚ではあるけれど、獲れ獲れの、それも冬場の脂がのった刺身なんていったらアナタ、ヘタなマグロの赤身なんて目じゃないほどの悶絶級の旨さ。
その他、バター炒めなどのソテーにしてもジョートーな魚、それがちぬまんだ。
あ……これじゃあ「水納島の肴」になってしまうか。
ともかく、クスクーと総称されるサザナミハギ系のニザダイ類が、いわば煮付けや唐揚げで勝負するしかない「雑魚」的扱いなのに対し、沖縄地方におけるちぬまんことテングハギは、昔から鮮魚好きに一目置かれる存在だ。
テングハギはオトナになると動物プランクトン食になるそうで、中層に群れていることが多い。
水納島でもポイントによっては、リーフ際の浅いところから礁斜面の水深20mくらいまでのところで、大きな群れになっていることもある。
ただし古来よりジョートーな食用魚として漁獲され続けている自らの立場を遺伝子的に理解しているせいか、ヒト=ダイバーを迷いなく外敵とみなすテングハギたち。
そのため、群れている彼らに近づくのは容易ではない。
その一方で、リーフの中でもフツーに観られ、昼間から岩陰で休憩しているものもいるくらいだから、リーフ際でもふとしたときに近寄れることもある。
オトナの階段を昇り始めの若魚は、オトナに比べればよほど近寄りやすいんだけど…
オトナでさえウソをついていないピノキオの鼻状態でとどまる額(?)のツノは、若魚ではほんの申し訳程度にしか伸びていない。
この「テング印」がまったくない幼魚は、別の魚かと思えるほど。
丸っこくて可愛いチビターレ、これはリーフ際の死サンゴがたくさん転がっている浅い海底に2匹いたもので、7月に観た時は↑色味が薄かったものが、翌月にはほんの少し成長していて、色味がオトナに近くなっていた。
形が特異なオトナよりも、丸さが可愛いチビのほうが人気が出そうなキャラクターだ。
オトナがたくさんいるんだからもっと出会う機会があってもよさそうなものなのに、藻食性のチビターレ時代は生活の場がオトナと違うのか、残念ながら通常のボートダイビングでは出会う機会はほとんどない。
こんなチビマルチヌマンが20匹くらい群れていたら、たいそう可愛いだろうになぁ……。
あ、藻食のチビの間は群れないのかな??