全長 5cm(写真は3cmくらい)
トビギンポは「ギンポ」と名がついているけれど、ギンポとベラがまったく異なるグループであるのと同じぐらい、ギンポ亜目とは全然違うワニギス亜目というグループに属するトビギンポ科の魚だ。
ベラギンポ科やトラギス科の魚たちが同じワニギス亜目に属するということは、その見た目からもわかりやすい。
トビギンポ科トビギンポ属には、現在ではトビギンポのほかミナミトビギンポ、サンゴトビギンポの3種が知られている。
これがまた例によって重箱の隅をつつくよりも細かい精査(ウロコの数など)による分類なので、我々シロウトが海中で観ただけではもちろん、撮った写真を見比べたってどだい区別は不可能。
なので写真の子はひょっとするとミナミトビギンポかもしれないし、サンゴトビギンポかもしれないのだけれど、当コーナーではそれらをひっくるめてトビギンポと呼ぶ。
さてその「トビギンポ」は砂底環境が大好きな魚で、砂底の表層付近に体を埋めつつ、顔だけ出している……ようなのだけど、なにしろオトナでさえ5cmほどと小さく、おまけに白い砂にまぎれるように白っぽい体をしているから、彼らが自然体の状態のときに見つけるのはかなり難しい。
そのかわり、砂地の根の周りなどにも埋まっていることがあるので、何も知らずにダイバーがそのあたりを通りかかった際に、ピッ、ピッ、ピッ!!と慌てて飛び出てジャジャジャジャーン!となってくれる。
とはいえ飛び出てもたいていすぐさま砂に潜ってしまうから、なかなかフルボディを拝む機会には恵まれないのが玉に瑕。
運よくお利口さんに巡り会えれば、冒頭の写真のようにお姿を拝ませてもらえる。
もっとも、拝むといっても写真の子のように若いと全長3cm程度だから、クラシカルアイでは何が何やら見えないかもしれない。
たとえ肉眼では見えなくても何枚か写真を撮っておくと、彼らのもうひとつの特徴を楽しめることもある。
トビギンポの眼は、細長い体の先にポコポコと2つの玉がついているマンガのような塩梅で、まさに眼玉状態。
この顔だけ見れば、トビギンポじゃなくてメダマギンポのほうがふさわしそうなほどだ。
砂上でジッとしているように見えるトビギンポたちは、この目玉をけっこうキョロキョロ動かしているのだ。
傍にいるダイバーを警戒している際は全方位をチェックしているだろうから、相当キョロキョロしているに違いない。
いかんせんクラシカルアイでは肉眼観察は不可能なサイズながら、ファインダーで覗き見るぶんには楽しめそう。
小さなトビギンポの2匹の目玉オヤジに、文字どおり要注目だ。
注目したくても、昔ほどには出会えなくなっている気がするなぁ…。
< 見えなくなっているだけなのでは?