水納島の魚たち

トゲカワハギ

全長 8cm(写真は4cmほどの若魚)

 2025年もいよいよ押し詰まってきた晦日が、その年の潜り納めの日となった。

 その1年納めの日にオタマサが出会ったのは、人生初遭遇のカワハギの仲間だった。

 水深30mちょいとやや深めの砂底には、漁具なのか何なのか、ずっと昔から埋もれ続けているロープがあって、一部が砂底から突き出てアーチを描いている。

 そのロープには様々な付着生物がついていて、そこにまたいろいろな生き物たちが暮らしているので、このポイントを訪れる際のオタマサの定点観測コースになっている。

 人生初遭遇カワハギはそのロープについていて、撮ろうとするたびにロープの裏側に回り込むためなかなか苦労したらしい。

 当初はアミメハギかなと思いながらも、後刻調べてみたところ、これはどうやらトゲカワハギという種類のようだ。

 正面から見ると、体からヒダヒダがたくさん生えていることがわかる。

 これらヒダヒダをトゲに見立てた名前だろうか。

 オタマサによると4cmほどだったというからまだ若い子なのだろうけれど、成長してもせいぜい8cmほどだそうな。

 これまで出会ったことがないのだからけっこうレアなカワハギなのかと思いきや、サンゴ礁域の浅いところにフツーにいるという。

 とはいえネット上で出てくる水中写真といえばチビターレばかりで、オトナっぽいものはほとんど釣果の写真だ。

 漁港などでさえ釣れるようだから、なんてことのない浅いところにけっこうフツーにいるんだろうけれど、日本産海水魚1248種を網羅している山渓ハンディ図鑑「改訂版日本の海水魚」には載っていなかったりする。

 チビターレはおりにふれ出没しても、オトナはダイバーには縁遠い存在なのかもしれない。

 水納島のようなところだと、オトナはどういうところにいるのだろうか。

 というか、いるのかな?オトナ。

 さっそく追記(2026年1月)

 一期一会の儚い出会いで終わるかと思われたトゲカワハギは、その後半月以上経ってもずっと同じところにいる(らしい)。

 再会できたおかげで、トゲカワハギチビはこういう色模様になることもある、ということがわかった。

 ところで、昨年末に出会って年始になってもまだいるということは、「足掛け2年に渡って居続けていた」ということにしていいんだろうか…?

 このポイントを訪れるたびにオタマサが確認しにいっているのは、ひとえにこのトゲカワハギが人生初遭遇と思えばこそ。

 ところが、別件でオタマサが撮った過去写真を確認していたところ、2015年7月にまったく別の場所で↓こういう写真を撮っていたことがわかった。

 砂底からポツンと生えていたオレンジ色のヤギについていたこのチビは、その体色の特徴からしてどう見てもトゲカワハギ、しかも今回出会ったサイズよりも2周りほど小さそうなチビチビだ。

 どれほどヒマでも、撮るだけ撮ってナゾをナゾのまま放置することをまったく厭わないオタマサのこと、当時の7月なんていったら撮った写真をゆっくり吟味する時間なんてないから、画像ともどもすっかり記憶の底に沈んでしまっていたのだろう。

 もっとも、11年前の時点でキチンと正体を調べようとしても、今のようにネット上で星の数ほどの手掛かりを得られたとも思えないけれど…。

 正体不明のままではあっても記録を残しておけたおかげで、今回は初認識であって「初遭遇」ではなかったことが判明したのだった。