全長 60cm(写真は30cmほどのメス)
20年〜21年のオフシーズンは、いつになくブダイブダイ眼になっていた。
そしてそれまでほとんど気にも留めていなかった彼らの興味深い様子をじっくり楽しむ機会を得たおかげで、ブダイブダイ眼じゃなかったら絶対に気づかなかったであろう人生初遭遇をはたすこともできた。
それがこのツキノワブダイだ。
パッとしない色柄ではあるものの、なにしろこのオフはブダイブダイ眼になっていたものだから、これまで見かけたことがない種類だという見当がついた。
後刻調べてみて、これがツキノワブダイのメスらしいことがわかった。
横から観ると気取ったポーズをしているように見える彼女ながら、前から観ると……
…かなり味噌っ歯。
こういう顔で気取ったポーズを取られましても…。
というか、ブダイ類って全般的にこんな味噌っ歯でしたっけ?
味噌っ歯はさておき、オスは60cmを超えるというからかなり大型のブダイで、おそらくドロップオフの壁沿いなどの潮通しのいいところをもっぱらの暮らしの場にしているのだろう。
そういう環境は水納島周辺にはなかなかないし、図鑑的にも数は少ないということなので、ひょっとしたら人生最初で最後の遭遇かもしれない。
だから何?と言われてもおかしくないほどパッとしない姿ながら、なんであれ「人生初」はうれしいのだった。
…と思っていたら。
その翌日、また別のポイントで潜ったところ、またしても……
…ツキノワブダイの姿が。
前日出会ったメスよりももっと小柄な個体で、黄色味が強い若い頃の色味がまだ残っている。
周囲には彼女以外見当たらなかったとはいえ、フツーにいるのかなぁ、ツキノワブダイ……。
…と、なにげにフツーにいるのかもしれないと思い始めた矢先、この稿を書くにあたってブダイ類の写真をまとめてあるフォルダを見てみたところ……
…なんてことだ、コンデジによるショボショボ証拠写真とはいえ、もっと若い頃のメスのツキノワブダイをひと月前に撮っていたではないか。
しかも写真は、「ツキノワブダイ」と名前を付けたフォルダに…。
たったひと月で出会いの記憶は遥か3万光年離れた忘却の彼方へと消え去るくらいだから、ひょっとするともっともっと出会っているのかもしれないツキノワブダイなのである。
※追記(2022年9月)
リーフ際でちょこちょこ姿を見かけることはあっても、オスには会えない…と思っていたツキノワブダイ。
ところが今夏(2022年)、リーフ際でしばしばオスと出会えるようになった。
もっとも、ツキノワブダイのことなど早くもすっかり忘れてしまっていたので、そばを通り過ぎていくブダイのことを、見慣れないヤツ…と思いはしても、即座にツキノワブダイのオスだと認識できなかったワタシである。
でも尾ビレ付け根付近の満月模様は、紛れもないツキノワブダイのオス印。
昨年あれほど注目しても「オス」の姿はどこにも見当たらなかったというのに、今夏リーフ際のあちこちでちょくちょく出会えるのはなぜ?
昨年メスだった子たちが、そこかしこで「オス」になったのだろうか。