全長 7cm
擬態とは、平たく言えば、何かのフリをすること。
昆虫の世界でいくらでも例をあげることができるのと同じく、海の中も擬態に満ち満ちている。
このツマジロオコゼはハオコゼの仲間だけあってとにかく枯れ葉にそっくりで、この色で海藻や枯葉などが堆積しているところに紛れ込んでいたら、その擬態効果は抜群のはず。
ところが水納島で出会う彼らはたいてい、白い砂底にポツンと寝そべっている。
一生懸命ユラリユラリと葉っぱのフリをしているようながら、むしろかなり目立ってるんですけど…。
しかし当人は擬態に相当な自信を持っているらしく、近づいて近づいてカメラを限界まで寄せても、ユラリユラ〜リとあくまでも葉っぱで居つづける。
前から見ると…
流れやうねりがあってもなくても、このようにわざと体を左右にかしがせている。
黒っぽい体色のために目鼻立ち(?)はあまり目立たないのだけれど、正面から見ると案外可愛い顔をしている。
鼻筋(?)から背ビレ前端にかけて、白いラインがあるものもいて、それゆえにツマジロオコゼという名がある。
このように茶色が濃いものがいるかと思えば、かなり淡いものもいる。
多くの魚たちは体色の濃淡を自在に変えることができるから、ツマジロオコゼもきっとどちらにもなれるのだろう。
であれば、白い砂の上にいるのだったら、いつも淡くなっていればいいのに…。
ツマジロオコゼは図鑑的には10cmほどになるそうで、ネット上に出ているオトナの写真を拝見すると、相当オコゼオコゼした風貌になっている。
水納島では過去25シーズン(2019年現在)でそこまで大きな子に出会ったことはなく、これまでのところ、大きくてもせいぜい6、7cmといったところだ。
オトナになると、その姿にふさわしい場所で生きていくようになるのだろうか。
ということは、白い砂底にいるツマジロオコゼは、まだ終の棲家にたどり着いていないか、運悪く来てはいけないところに流れ着いてしまったお子様ということなのかも。
お子様といえば、夏を過ぎた頃に、ちょくちょくツマジロオコゼのチビターレに出会える年がある。
砂粒と比してこのサイズだから、せいぜい15mmくらいだろう。
鼻筋の白は小さい頃によく見られるのかと思いきや、さらに小さいものでも白くなっていないものもいる。
おなじみの人差し指対人比。
このサイズで海藻の切れ端や枯葉が堆積しているところに居られると、もはやお手上げ。
ところが彼らチビターレもやはり、白い砂の上に居てくれるから、クラシカルアイでもたやすく発見できるほど、けっこう目立っているのだった。