全長 150cm
2016年のゴールデンウィークのこと。
スカテンやキンメモドキのチビたちが群れている、気持ちのいい砂地の根にカメラを向けているゲストのアネモネフィッシュさん。
群れ集うキンメモドキやクロスジスカシテンジクダイのチビを撮っておられる??
いえいえ、そのターゲットはキラキラ光る群れの中。
やがて「それ」は、少しずつ動き始めた。
えッ?
ええッ??
エ゛――――――――ッ!?
なんと「それ」は、コバンザメ付きの超巨大ヤイトハタだった。
ひと尋を優に超えるそのサイズ、海中で見れば1.5倍になるから、その存在感たるや人間界の泉ちゃん(当店有名ゲスト)級である。
少なくともオタマサならば、一口で飲み込まれてしまうことだろう。
実はこのヤイトハタ、この根に至る直前に、遠目に静かにゆったり泳ぎ去る姿を目にしていて、まるでドラム缶が泳いでいるかのような巨大さに度肝を抜かれていた。
それがまさかここで休憩していようとは。
我々が邪魔をしたせいで、キンメモドキ若魚の雲からヌッと姿を現した彼は、再び悠然と泳ぎ始め、群青の彼方へと去っていった。
去り行く様子を動画でも…。
この年にはその後も何度か目にする機会があった巨大ヤイトハタ。
おそらく同じ個体だろうけれど、それにしても水納島の生産量で、このような大きなハタを養えるとは思ってもみなかった。
もっとも、これくらい大きければその行動範囲は相当広いと思われ、水納島にはちょっとしたマイブームで立ち寄っていただけかもしれない。
ちなみにヤイトハタは高級食用魚で、沖縄県内では昔から各所で養殖に取り組んでいる。
そうはいってもこんな巨大なものにはそうそうお目にかかれるものではない。
ここまで巨大になるまでに、いったいどれくらいの年月がかかっているのだろう?
養殖でさえ高級なヤイトハタは、天然物ときたら超高級魚で、聞くところによると5キロを超えるものなら1キロ当たり1万円で取引されるという。
5キロのヤイトハタなら1匹5万円。
この超巨大ヤイトハタ、何キロあるんだろう?
…なんて俗っぽい話は陸上にいるからこそであって、海の中でこんな巨大なハタに間近に出会うと、その神々しさに圧倒され、存在する次元の領域がまるで異なる生命体を観ている気分になる。
ダイバーと釣り人との、海中生物に対する基本的な思いの違いは、そういったところにあるような気がするのであった。