全長 30cm
20年以上も同じところで潜っていると、海の中で観られる顔ぶれに変化があることに気づくようになる。
このユメウメイロも、そういった「変化」があった魚たちだ。
ユメウメイロはウメイロモドキと同じタカサゴ属の魚で、体色もそっくりだから、写真だけだと見分けがつかないかもしれない。
でも……
ウメイロモドキよりも体高があり、
サイズも大きく、
しかし青味の加減の涼風感(?)がウメイロモドキほどではなく、
黄色と青色のメリハリもさほどない……
…という特徴を踏まえると、↓この写真のどちらがユメウメイロか、すぐにわかりますね?
そう、右がユメウメイロ。
ウメイロモドキがそうであるように、何かに驚いて中層〜上層から底付近に降りてきたときなどには、ユメウメイロたちも他のグルクン類と一緒になって泳いでいることもある。
見慣れれば、両者が別々に居てもひと目でわかる
そんなユメウメイロは、かつての水納島では砂地のポイントの水深20mよりも深いところで、ときおり2、3匹を目にするくらいで、5匹もいると「ほぉ…」となる魚だった。
いたとしてもたいてい↑これくらい。
ところが2016年のシーズンになると、突如としてといっていいくらいに、やけに目立つようになってきた。
しかもけっこうな群れを作るようになり、20mよりも浅いところまでフツーに進出してくるようになったのだ。
多いときには30匹くらいで群れるようにもなっている。
もっと南洋の海に行けば巨群に出会えるようながら(黄色の入り方には地域差があるらしい)、水納島ではそれまでほとんど目にする機会が無かったことを思えば、いったい何があったの?と彼らにインタビューしたくなるくらいの変化だ。
ただしユメウメイロの群れにはウメイロモドキほどのまとまりがないことのほうが多く、落ち着いているときは、群れといっても疎らな集まりってな感じになっている。
集まっていても、それぞれの向きがてんでバラバラ。
それでも、何かに危険を感じたりすると、サッと集合して「群れ」っぽくなることもある。
これくらいの密度で集まり、なおかつみんな同じ方向を向いている時に近づけるチャンスは多くはなく、わりと多く集まっているように見えるのに、写真にするといつも冴えないユメウメイロだったりする。
その群れがまるでウメイロモドキの群れのように、リーフ際まで来ることがある。
リーフ際でユメウメイロだなんて、昔じゃあり得なかったのに……。
ウメイロモドキに比べるとメリハリが無くとも、サイズがでっかいから、リーフ際で群れるとそれなりに存在感がある。
けっこう頻度高く目にできるようになってレア度が格段に落ちたかわりに、数が増えたのでそれなりに見応えはアップしたユメウメイロ。
浅いところでフツーに観られるのはウレシイものの、いったいぜんたい、2016年以前と以後で彼らになにがあったのだろうか。
ところで、タカサゴやニセタカサゴ、クマザサハナムロといったグルクンたちは、群れから離脱した一団が砂地の根に降下してきて、ホンソメワケベラクリーニングケアを受ける様子をそこらじゅうで観ることできる。
一方、ウメイロモドキがそのようにホンソメケアを受けるために、砂地の根に降りて来るのを目にした記憶が無い。
それに対しユメウメイロは、フツーに観られるようになって以来、ちょくちょくホンソメケアを受けている彼らを観るようになった。
彼らもやはり、ホンソメケアを受けるときは体色を暗めにする。
暗めにするどころか、全面的にホンソメに身を委ねているときは、お腹側が赤くなるくらいに変化している。
どれほど暗めにしているか、群れから離れて降下してきたばかりの子と比べると一目瞭然。
根に立ち寄るのはホンソメケアを求めているときだけではなく、拠り所的にたむろしていることもある。
見た目はそっくりながらも、ユメウメイロはウメイロモドキと比べると、砂地の根への依存度が高いようにも見える。
ということを踏まえると、ある年を境に突如目立ち始めたユメウメイロ、ホントはもっと深い砂地の根を拠り所にしていたのに、深場になんらかの異変が発生し、やむを得ず浅いところに進出してきている……
…ということなのか?
偶然かもしれないけれど、水深30m以浅の根に比べると遥かに魚影が濃かった「禁断の根」と呼んでいるいくつかの根から魚たちが激減してしまった頃と、ユメウメイロが浅場に進出してきた時期がビミョーに重なっているような気もするなぁ……。
誰も知らない深いところで、静かに異変が起きているのかもしれない。