水納島の魚たち

ゼブラハゼ

全長 15cm

 聞くところによると、海域によってはこのゼブラハゼがリーフの棚一面に群れているという場所もあるらしい。

 すこぶるつきで潮通しがよく、人の来訪が少ない場所なのだろうか。

 残念ながら水納島にはそういった場所がないので、ゼブラハゼが雲霞のごとく群れている光景なんてものを目にする機会はまったくない。

 それどころか、ただ1匹に出会うことすら稀だ。

 深いところにいるわけではなく、水深10m未満の浅いところに住むというから、いるなら普通に見られるはず。

 それでも見たことがないのだから、「水納島にはゼブラハゼはいない」認定してもそろそろよろしかろう……

 …と思い始めたときのこと。

 普段から普通に潜っている場所で、このゼブラハゼに会ってしまった。

 長い根が沖に向かって何本も伸びている岩場のポイントでのことで、リーフ際から続く根の上方で、クロユリハゼやコガシラベラに混じってツンツン泳いでいるではないか。

 そうはいっても、他の魚たちが数多く群れているなかに、ゼブラハゼは1、2匹。

 その後も同じ場所でときおり姿を探してみるものの、いたりいなかったり、幼魚ばっかり10匹くらいいたかと思えばオトナのペアが3組くらいいたり、という具合に、そこに住むゼブラハゼの数は限りなくゼロに近いあたりで増減を繰り返している。

 まだまだ定着するには道が遠いようだ。

 もっとも、たくさん群れているよりもわずか1ペアだけのほうが、ありがたみは増すというもの。

 だからゲストに案内することもよくあった。

 ところが。

 ゼブラハゼと聞いてもピンと来ない方が多い。

 ワタシが指差す方向を見てオーケーサインを出してくれていた方々のうち、本当にゼブラハゼを認識していらっしゃる方は3割くらいではなかったろうか。

 ひょっとしてコガシラベラを見ながら力強く「オーケー!!」って言ってなかったかなぁ……。

 ゼブラハゼは遠目で見ると冴えない色に見えるけれど、近づいてよく見たらとってもとってもきれいだ。

 

 水深が浅いから、光りがきらめく晴れた日に順光で見れば、意外なほどに多彩であることに驚く。

 まだ若魚や幼魚を撮っていないし、できることならたくさんいるようになってほしいなあ……

 ……なんて言っていたのは、まだフィルムで写真を撮っていた頃だから相当昔のことになる。

 その後デジイチで写真を撮るようになってからこっち、一度もゼブラハゼに出会っていない。

 これまで確認してきた場所で観られなくなっただけで、島の他の場所に行けばまだいるんだろうか??