写真の個体の大きさ 1センチ
稀といわれるウミウシであっても、砂地を這ってくれていると、筆者のようなフシアナ眼でも発見できてしまうからありがたい。 実際、こんな小さな半透明のウミウシなんて、砂の上を這ってでもいないかぎり目にする機会はほとんどない。
ところがまったく驚くべきことに、この子に限らずウミウシの多くが、19世紀に論文の形で記載されているのである。 このアカボシウミウシなんて、1877年。 1877年といえばあなた、日本では西南戦争の真っ只中ですぜ。
そんな時代にこんなウミウシの研究をしている人がいたってことひとつとっても、世の中の博物に対する知的欲求を満たそうと思えるだけの経済的「豊かさ」が欧州にはあった……ということがよくわかる。 西欧文明に追いつけ追いつけと文明開化の道をひた走る当時の日本で、こんなウミウシの研究をどんなに熱心にやったところで、きっと誰も相手にしてくれなかったことだろう。