●海と島の雑貨屋さん●
写真・文/植田正恵
月刊アクアネット2003年8月号
毎日暑い日が続いている。
じっとしていたら、ゆでダコならぬゆで人間になるかもしれない。
だから人々は海を目指す。
沖縄の夏は、なんといっても海の季節なのである。
と同時に、台風の季節でもある。
ご存知のとおり、沖縄は台風銀座と言われるくらい台風がよく来る所。
今年も早々と5月から台風の洗礼を受けた。
一口に台風といっても、住む場所でまったくその存在感は変わる。
かくいう私は、沖縄在学中の4年間で何度も巨大な台風を経験していたから、台風に関してはけっこう知っているつもりだった。
ところが水納島に来て、その認識がいかに甘いものであったか思い知らされた。
とにかくその風のすさまじさときたら………。
同じ沖縄でも、建物が立ち並ぶ都会と離島とではまったく台風に対する感覚が異なる。
風向きがどこになろうと四方八方から吹き荒れる小島では、ひとたび暴風域に入ってしまうと表になんて出ていられない。
出られないだけならまだしも、停電したら目も当てられない。
電力会社の人たちも台風中は復旧作業なんてできないから、ひとたび停電したら長引くことが多いのである(過去9年の最長不倒記録は38時間)。
また、台風だと当然ながら連絡船は欠航している。
つまり商店のない水納島では、外部から何かを補給することができなくなるのだ。
だから大きな台風の前には、燃料、食料、酒(私だけ?)、その他もろもろ、何日も船が欠航しても耐えられるよう備えなければならない(これまでの欠航最長記録は6日間)。
昨年の16号はなかなかストロングだった。
昨年まで、ストロング台風のときは我々夫婦は民宿に避難させてもらっていたのだが、その部屋の水道はモーターで汲み上げる方式なので、停電すると水が出なくなる。
ガスコンロと汲み置きの水とカップ麺は用意していたものの、クーラー、扇風機は動かない、ドアも窓も開けられない、となると、室内はガマン大会の様相を呈してくる。
うだるような暑さと湿気の中、団扇すらない……。
そんな窮地を救ってくれたのは、焼きそば「UFO」の蓋だった。
こんなものでも、扇げばちゃんと風が来るのだ。
用意したカップ麺が、赤いきつねやカップヌードルのようなペナペナ蓋のものばかりじゃなくてよかったぁ………。
島内では我が家だけが際立ってボロイので、毎年毎年、ストロングな台風が来るたびに、電話線は切れたり、屋根が剥がれたり、室内は水浸しになったり、家の外にはジャングルが出現したり、などなど、どこから後片付けの手をつけたらいいのかわからないくらいに手ひどくやられてしまう。
けれど、人的被害さえなければ、それはそれで後日の飲み会時の格好のネタになるのもまた事実。
また、台風が来ないと水不足になるし、海水温が上がりすぎ、サンゴが死滅するということもあった。被害を受けはするものの、それはそれでなくてはならない自然のサイクルなのかもしれない。
テコでも動かない立派な家に住んでいれば私も台風を楽しむことができるのに、と思いつつ、今年もまた台風の季節を迎えるのだった。