全長 25cmほど
本土同様沖縄でも、夏鳥として飛来してくるアカショウビン。
ただし水納島にはもっぱら梅雨時にフラリとやってきて、滞在は短期間で終わることが多い。
様々な陸生動物を餌にすることもあるようながら、やはり淡水の水辺環境が無いと暮らしづらいのだろうか。
年によっては2羽渡ってきてわりと長く島内で暮らしていたことがあるけれど、いずれにせよ姿を見かける機会にはなかなか恵まれず、梅雨時の湿度が高い空気の中を響き渡るヒュルルルルルルル…という特徴的な鳴き声だけでしか存在を確認できない。
南西諸島には亜種リュウキュウアカショウビンもやってくるそうで、光の当たり加減がバッチリだったら背側の色味で見分けられるようながら、鳴き声だけで両者を区別するのはまず不可能だ。
なかなか姿を見せてはくれないアカショウビンなんだけど、過去に何度か姿を見せてくれたことはある。
一度は雑貨屋さんの店舗で店番をしていた際のことで、出入り口のドアのガラスにバンッ!と激しくぶつかる音がしたので、ナニゴトかと外を見たら、デッキの桟にアカショウビンが。
どうやら出入り口のドアのガラスにぶつかってしまったらしい。
メジロと違って大事に至ることはなかったようながら、多少頭がクラクラしていたのか、それとも照れ隠しをしていたのか、しばらく桟に止まったままでいてくれたアカショウビン。
おかげで尾羽をピコピコ動かす様子も含め、じっくり眺めることができた。
後にも先にも、これが人生最短距離のアカショウビンだ…
…ったのは、2020年の梅雨時までのこと。
コロナ禍真っ只中でヒマだったこともあり、雨降りながら傘をさしてピチピチチャプチャプランランランと散歩をしていたところ、集落のほうからナリコさんがオタマサを呼ぶ甲高い声が。
駆けつけてみると、雨で濡れそぼちたアカショウビンが、民家の庭木の下でジッとしていた。
ケガか何かで飛べなくなってしまったらしく、歩くことはできても飛び立てないようだ。
ガラス戸か何かにぶち当たってしまったのだろうか。
原因は不明ながら、このままでは衰弱死、もしくはハブやカラスに襲われること必至に見えたから、とりあえずいったん我が家で保護することにし、やんばるの野生生物保護センターに引き取ってもらえないかと連絡することにした。
ヤンバルクイナの場合、うっかり車で轢いてしまってもまだ息があれば、野生生物保護センターに連絡してそのあとのケアをしてもらうことができる…というのをどこかで見聞きしたことがあったからだ。
ところが、かくかくしかじかでアカショウビンを保護した旨伝えたものの、保護センターではあってもヤンバルクイナ以外の鳥さんの場合は対応が全然違っていたのだった。
野生生物保護センターが言うことには、このあと我々にできることといえば、死ぬまで、もしくは飛べるようになるまで自分で保護を継続するか、もしくは再び野に放つしかないそうな。
仕方がないので園芸用のカゴをケージがわりにして件のアカショウビンを保護下におくことにし、島で何を食べているのか不明なのでイモムシやらミミズやらを与えてみたところ、けっこう食欲はあった。
この分だと、回復するまで世話できるかも。
ところが。
さっそく「キョロちゃん」という名前までつけたオタマサだったのだけど、しばらくそうして調子よく食べていたアカショウビンに、異変が。
エサとして与えてみたなかの何かが悪かったのだろうか、急にグッタリしてしまい、二度と食欲を取り戻すことはないまま、ついにお星様になってしまった。
最初からダメ元ではあったにせよ、ひょっとすると雨の中でそのまま放置しておいた方がキョロちゃんは長生きできたかもしれない…。
俄かな似非ヒューマニズムで野生生物に関わってはいけないということを、今さらながら身に染みて学んだ我々なのだった。
※背中の色味からすると、もしかしたらリュウキュウアカショウビンなのかもしれません。