甲幅 15mm
アラメサンゴガニは中部太平洋が主分布域らしく、日本では小笠原あたりでは普通に見られるようながら、沖縄では遭遇頻度は少ない。
実は冒頭の写真は随分昔にお向かいの伊江島で撮ったもので、それだと「水納島の」という前提で紹介しているエビカニ倶楽部のルールに反してしまう。
でも水納島でも過去に1度だけ出会ったことがあるのだ。
あいにくその時は写真を撮れなかったけれど、アラメサンゴガニは水納島にもいる(いた?)ことは間違いないので、ともかくも「水納島の」カニと紹介しても偽装表示じゃないってことで…。
これまで出会った2度とも、リーフ上の浅いところで育っているヘラジカハナヤサイサンゴに暮らしていたアラメサンゴガニは、ネット上に散見される写真を見てもヘラジカハナヤサイサンゴ類の枝間にいることが多いっぽい。
オオアカホシサンゴガニの稿でも触れたように、ヘラジカハナヤサイサンゴはリーフエッジ~リーフ上など浅いところが大好きなサンゴだから、やはり海が荒れれば当然波当たりは強い。
そもそもそういうところで育っているサンゴだから、ちょっとやそっとの波濤でどうにかなるものではないにせよ、台風時ともなると波高8~10mもの強烈な力がサンゴ周辺にブチ当たっているのは間違いない。
そんな中でアラメサンゴガニは、必死になってサンゴにしがみついているのだろうか。
落ち着きのないものたちは、あっという間に流されているのかもしれない…。
怒涛の波濤が押し寄せているときになど、サンゴの枝間では食事すらおぼつかなそうだ。
ひょっとすると彼らは台風の来襲を敏感に察知し、それまでに一所懸命に食いだめしておいて、台風襲来時にはサンゴの枝の奥の方で息を潜めているのかもしれない。
もしかしたら家ごと吹き飛ぶかもしれないという恐怖の中、じっと堪えるアラメサンゴガニ…。
あれ?よく考えると、台風のたびに吹けば飛ぶよなボロ家でじっと息を潜めて耐えている我々と同じだ。
そんなサンゴガニ類を見るにつけ、がんばれよ、と応援せずにはいられない。
…と言っていたら、ひと足先に旧我が家の屋根が台風で吹き飛んでしまったのだった。
サンゴのほうがよほど台風に強いのかも…。
※さっそく追記
このところ(2022年4月)サンゴガニの仲間たちのリニューアルに取り掛かっているものだから、興味も新たにサンゴの枝間を覗いていただんながついに発見!
アラメサンゴガニ@水納島。
私も観させてもらったところ、昔見たアラメサンゴガニの印象に比べると随分でっかく感じた。
オオアカホシサンゴガニの成熟個体ほどの大きさだったんだけど、そんなにでっかくなる種類なんでしたっけ?
そのサイズのオオアカホシサンゴガニならほぼ間違いなくペアで暮らしているというのに、やはり個体数が少ないのか、ロンリーオンリーなアラメサンゴガニだった。
※さらに追記(2022年5月)
水納島のアラメサンゴガニをようやく撮ることができた!と喜んだ6日後に、まったく別のポイントで、再びだんながアラメサンゴガニを発見した。
前回観た場所とは500mくらい離れているところだから、2個体目であることは間違いない。
これまでずっと、「アラメサンゴガニは水納島では珍」と信じてきた私だったものの、ここにきてにわかに疑惑が…。
フリータイムなどの際にもヒマさえあればサンゴの枝間を覗き続けて四半世紀以上にもなるのだから、これまでアラメサンゴガニは本当に少なかったのか。
それとも単に探し続けてきた私の目が節穴だっただけなのか。
いずれにせよ、覗きやすそうなサンゴだけをテキトーにサーチしていただんなが立て続けに2個体発見してしまった以上、「少ない」と言ってもまったく説得力が失われている…。
そこで新たな疑問が。
昔は少なかったものが、近年増えてきているのか。
近年というよりもほんの最近だったりしないか?
そういえば。
昨秋から今に至るもなお厄介な禍をもたらし続けている軽石、あれは小笠原近海の海底火山の噴火によるものだった。
一方分布域が中部太平洋寄りのアラメサンゴガニは、小笠原ではフツーに観られるサンゴガニの仲間で、カニだから幼生期は浮遊生活をしている。
風だ海流だ何だがどうにかして小笠原の軽石が大量に沖縄近海までたどり着くのであれば、浮遊生活をしているカニの幼生だって、大量に沖縄近海に来ていてもおかしくはない…のでは?
すなわちアラメサンゴガニは、昨年までは少なかったけれども、秋以降に流れ着いたチビが今育ってます…ということだったりして?
このままでは妄想が膨らむ一方なので、いっそのこと
「それ以前から沖縄本島域でもアラメサンゴガニはフツーに観られましたよ」
という冷静なご報告をお待ちしております…。