体長 15cm(推定)
ゴールデンウィーク中で連日ゲストをご案内していたときに、根の傍らで黒いシャコが顔を覗かせているのを見つけた。
早いもので、もうかれこれ10年前(2012年)のことになる。
ガイド中はちゃんとしたカメラを携えていないからその場で見るだけで終わったものの、巣穴の雰囲気といい、たたずまいといい、どう見てもバルタンシャコと同じに見えたので、ゲストにはとりあえずバルタンシャコ(黄金のシャコ)のブラックバージョンとご案内した。
それ以前にピンクバルタンに会っていて、なおかつそれが黄金色に変わる(推定)ことを知っていたので、だったら黒いタイプもいるのだろう…と短絡的に考えたのは言うまでもない。
ところが、GWが終わってヒマになり、ようやくカメラを携えて再訪することができたのでさっそく撮影したところ…
あれ?
目の形がバルタンシャコと違う!?
え?
じゃあこのシャコは誰??
入念な手作り感溢れる巣穴入り口付近の作りはバルタンシャコの巣穴にそっくりとはいえ…
…目の形がこれだけ違っていれば、さすがにバルタンシャコとは別の種類なのだろう。
ウーン…このシャコの正体はいったい?
当時は調べてもさっぱりわからず、ネット上で確認できる画像も極めて少なかった。
それが今ではかなりの数の画像が観られるようになっており、八重山方面で撮影されているものが多いなか、串本で撮られている画像もあった。
ただし画像検索する場合、「シャコの仲間」とか「ハナシャコの仲間」とか「トラフシャコ属の1種」(バルタンシャコはトラフシャコ属らしい)ではなく、「バルタンシャコ」で検索した方がヒット数は多く、さらに「バルタンシャコパープル」と検索すればよりたくさんの画像がヒットする。
あれ?
ブラックじゃなくてパープルなの?
言われてみると、ストロボ光を当てて撮った写真は、黒というよりはほんのり紫色に見えるじゃん…。
肉眼で観た第一印象が「黒」だったから、リセット能力が極めて低い私の脳は、ずっと黒認識していたらしい。
呼び名が黒であれ紫であれ、同じシャコのことを指しているのは間違いなさそうだ。
とはいえ、世間一般はこの黒なり紫のシャコも「バルタンシャコ」ということにしているようなのだけど、前述のように目の形がバルタンとは違っているんですけど?
目といえば、トラフシャコの学名Lysiosquilla maculataで検索してみると、和名のとおりの虎斑模様がクッキリハッキリした画像がたくさん出てくる。
ついつい体の模様や特大サイズに目を奪われがちなところ、それぞれの画像の目に注目してみると、トラフシャコの目は状況によって色が変わるのか、白っぽいものがいたり、このブラックバルタンと同じように、黒地に白く小さな点々がたくさん入っているバージョンもあることに気がついた。
だからだろう、どう見てもブラックバルタンにしか見えない画像がトラフシャコとして紹介されているケースも多い。
たしかに色模様は似ているけど、ブラックバルタンの目とは形が違うような気がするんだけどなぁ…。
あいにくこのブラックバルタンがこの場に居続けてくれたのはひと月ほどのことで、なおかつその後10年経っても再会は果たせていない。
再会できた暁には、私の脳でも紫色に見えるだろうか?