(Periclimenes dardanicora)
体長 15mm
随分遅くに梅雨入りしてもなおいいお天気が続いていた5月下旬(2023年)、明るく白い砂底を気分よく潜っていたところ、海底に転がるリュウキュウタケノコガイにイソギンチャクがついていることに気がついた。
フムフム…とばかり、そのイソギンチャクを撮ってみる。
このテのイソギンチャクがついているってことは、これはヤドカリ在住の貝殻なのかな?
…と、ヤドカリなのかどうかをチェックしようとしたところ、貝殻のどこかから何かがピュッと動いた。
ん?今のは誰?
それは…
ペリクリメネス・ダルダニコラ!
イソギンチャクなどを撮っている場合ではなかった。
まだ和名がつけられていないため、学名「Periclimenes dardanicora」のカタカナ表記で紹介されることが多いこのエビちゃんは、その見た目どおりウミウシカクレエビやヒトデヤドリエビと同じ属で、他の同属のエビちゃんたちと同じく、何かに寄り添って暮らしている。
その寄り添う相手は、ヤドカリである(とされている)。
…ということにちなみ、「Dardanus(ヤドカリ属)」が種小名の元になっているそうな。
ただしヤドカリといってもダルちゃんが見つかるのは貝殻にイソギンチャクをつけている種類がほとんどであるため、ヤドカリ自体をパートナーにしているのか、実はイソギンチャクに寄り添っているのか、ということについては、いまだ詳らかではないらしい。
いずれにせよ、初遭遇のこのダルちゃんも、たしかにイソギンチャク付きの貝殻についていた(砂粒だらけだけど、上の写真でダルちゃんがついているのは貝殻の表面)。
ということは、やはりこの貝殻はヤドカリってことなのだろうか。
もともとはどこにいたんだか、ピュッと飛び出してきた手前、陰に陰にと貝殻上を逃げまどうダルちゃんは、ウロウロするうちに、絵的に絶好のポジションに移動してくれた。
貝殻の入り口付近に居続けてくれる保証はどこにもなく、むしろそのままスルスル…と貝殻の中に入ってしまうかも…というオソレもあったんだけど、ダルちゃんは入口付近をジワジワウロウロしてくれていた。
せっかくだから、横からも拝見。
でも両者を見慣れた目には、ハサミのストライプがやたらと新鮮に映る。
分布的には西太平洋ということで広範に渡っているらしいのだけど、日本国内ではもっぱら駿河湾に出没しているっぽいダルちゃん。
ネット上の画像を見てもそっち方面の海ばかりで、サラッと調べたかぎりでは屋久島で見つかっている画像が最南端だった。
沖縄の海でもポコポコ見つかっているのかな?
国内最南端発見例がどこかはともかく、このテのエビちゃんの人生初遭遇とはとんとご無沙汰だった私は久方ぶりの興奮モードに包まれたものの、いかんせん深すぎる水深がそれ以上の滞在を許してはくれなかった。
再会の暁には、ヤドカリが出ているときにヤドカリの貝殻に乗っているところが観られれば…
…って、ヤドカリだったら、再訪してももうそこにいないんじゃ?
2日後に訪れてみれば、案の定貝殻ごとGone。
ああ、一期一会のかくも儚き…。