(カイカムリ科の1種)
甲幅 25mm
当店がダイビングサービスを営業していた頃、当エビカニ倶楽部の情報源として欠かせない存在のお一人となっていたゴッドハンドO野さんは、ご自身が発見した珍しいエビカニを、他のゲストにまで見せてくださるジェントルマンである。
それはたいてい小さな小さなエビカニたちで、それらをゴッドハンドシャーレと名付けられた魔法の(?)容器に入れ、他のみんながいるところへ持ってきて下さることが多かった。
ところがあるとき、ゲストをガイド中の私のほうに向かって泳いできたO野さんの手には、いつになくでっかいクリーチャーが。
それがこのカイカムリだった。
すでに紹介しているマロンちゃんと同じ種類のカイメンを背負っているけれど、カニ自体はマロンちゃんとは種類が異なるようだ。
例によってカイメンまで入れるとカニ本体が小さくなるから、本体部分だけ見てみると…
眼と眼の間の額(?)部分の甲羅の形が、マロンちゃんとは異なっている…ような気がする。
そんな甲羅の形うんぬん以前に、マロンちゃんがスッキリした手足をしているのに対し、この子は黄色っぽい毛で覆われている体がホワホワしていて…
…眼の小ささもあいまって、なんだか妙に可愛い。
見た目の可愛さとは逆に、岩肌をガシッとホールドする爪はかなり丈夫で、ゲストにカイカムリをお見せしようとする際に岩肌から離れてもらおうとすると、相当強力な力で抵抗する。
そんな力強い爪とカイメンも含めた色味から、発見者のゴッドハンドO野さんは、即座にこのカイカムリに「ゴッグ」の称号を下賜された。
もっとも、このようにゴッグに無理を聞いてもらってカニとわかるように撮っていればこそカイカムリであることがわかるけれど、日中の彼らはカイメンを背負った状態で微動だにしないから、ただのカイメンにしか見えない。
しかもこのような状態で潜んでいるのだ。
私がマロンちゃんを発見したときは、たまたま彼女が動いてくれたからこそ見つけられたけれど、ゴッドハンドO野さんは、このようなカイメン群のなかで微動だにしないモノを見つけ出しているのである。
O野さん、どうやって発見するんですか?p>
「カイメンの裾のあたりが少し丸まっていたから…」
今さら言うまでもないことながら、やはりO野さん、タダモノではない…。p>
あいにくタダモノではないのはO野さんくらいのもので、フツーのゲストは見つけられないどころか、力の加減がわからないものだから、ゴッグを無理矢理引っくり返そうとしてカイメンだけ剥ぎ取ってしまったりもする。p>
哀れゴッグ、丸裸。p>
でも心配御無用。p>
ちゃんとそばにカイメンを置いてあげれば…
…すぐ元どおり。
心なしか、カイメンを背負い終わったあとのゴッグから「ふぅ…」という吐息が漏れていそうな気もするけれど…(一連の写真は、ゲストが丸裸にしてしまったあとだんなが撮ったもので、このシーンを撮るためにカイメンからわざと剥がしたわけではありません、念のため)。
ゴッグが全身を出してくれたおかげで、普段はカイメンというベールに包まれている歩脚改め背負い脚の様子が見えた。
ホントにゴッグだった!(ズゴックか?)
同一個体なのかどうかは不明ながら、何年もの間ずっと同じところで観られ続けているゴッグは、同じ時に2個体いたりするほどこの場所を気に入っているらしい。
多くの場合、先ほどの写真のようにカイメン群に紛れているのだけれど、たま~に↓こういうこともある。
いくらなんでも、そんなところじゃバレバレなんじゃ…。
どれほどカイメン群に紛れようともダイバーに見つかってしまうから、いいかげん頭にきてヤケクソになっていたのかもしれない。
たしかに、隠れようと紛れようと、シーズン中に何度もいじくられていたら、ゴッグならずとも嫌気がさすのも無理はない。
相当負担を強いていたのだろうなぁ。
しかしこれまた心配御無用。なにしろ…
「さすがゴッグだ、なんともないぜ!」